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関東の諸都市・地域を歩く


#181(越谷LT編)のページ


#182 流山おおたかの森駅の近傍 ~森と成熟する市街地の対照~

 2021年4月8日、越谷レイクタウンとその周辺のウォーキングを終えた後は、東武アーバンパークラインとつくばエクスプレスが接続する「流山おおたかの森駅」へと向かいました。流山市は千葉県北西部の江戸川沿いに市域あって、みりんの産地として知られるまちです。流鉄線やJR武蔵野線、東武野田線(アーバンパークライン)が通過するものの、それぞれが結びつきのない状態であったものが、つくばエクスプレスの開通でそれらが有機的に結びつき、都心へのアクセスが向上したことも相まって、ベッドタウンとして近年存在感を増している都市です。その成長を象徴する、流山おおたかの森駅周辺を概観しました。



流山おおたかの森駅前の風景
(流山市おおたかの森南一丁目、2021.4.8撮影)
流山おおたかの森S・C

流山おおたかの森S・C
(流山市おおたかの森南一丁目、2021.4.8撮影)
流山市おおたかの森駅を望む

流山市おおたかの森駅を望む
(流山市おおたかの森南一丁目、2021.4.8撮影)
FLAPS階上のウッドデッキ

FLAPS階上のウッドデッキ
(流山市おおたかの森南一丁目、2021.4.8撮影)

 あたらしい開発エリアらしく、駅前にはランドマークとなる商業施設があって、多くの人々を惹きつけています。駅の南側にある「流山おおたかの森S・C」は瀟洒なファサードが印象的なショッピングセンターです。高架駅である駅からもスムースにアクセスできるほか、駅前の、街路樹がふんだんに植栽された広場からも調和したデザインとなっていて、シンプルながらも洗練された都市景観が醸成されていることが印象的です。メインとなるおおたかの森S・Cを中心に、FLAPS、ANNEX1、ANNEX2といったサテライトが駅を囲むようにつくられて、高架下の「こがげテラス」などの施設とともに、一体的な商業施設を構成しています。FLAPSの階上には、駅前を見渡せるテラススペースもあって、この現代的な駅前の風景を軽やかに俯瞰することができるようになっていました。つくばエクスプレス線の鉄路を挟み、西側を見ますと、駅周辺の建物の向こうに、豊かな森が広がっているのを見通すことができます。

 バスの発着場のある西口広場方面へ進み、商業施設や高層住宅群の立ち並ぶエリアを進みながら、先ほど眺望した森のある方面へと歩を進めます。この森は、「市野谷(いちのや)の森」と呼ばれます。駅名にも採られているとおり、オオタカも生息する豊かな自然が現在でも保存されています。もともとは50ヘクタールほどもある、農村地域における里山であったものが、つくばエクスプレス開通による急激な開発によってその面積を減じて、住宅地域と近接するようになったものであるようです。当初の計画では、森として残す面積は3ヘクタールほどとなるところを、市民活動などの成果により、25ヘクタールほどが、自然の森を残した都市公園として整備する方向性となったものであるようです。現代的な住宅地に近接する部分の一部には畑地も散見されて、この土地の原風景がどのようなものであったかを物語っていました。

つくばエクスプレス線越しに市野谷の森方向を望む

つくばエクスプレス線越しに市野谷の森方向を望む
(流山市おおたかの森南一丁目、2021.4.8撮影)


流山おおたかの森駅西側の景観
(流山市おおたかの森西一丁目、2021.4.8撮影)


畑地越しに市野谷の森を望む
(流山市おおたかの森西一丁目、2021.4.8撮影)
市野谷の森

市野谷の森
(流山市市野谷、2021.4.8撮影)

 現在進行形で開発が進む地域に隣接する市野谷の森は、落葉広葉樹と常緑の広葉樹、一部に針葉樹が混交する、典型的な里山の人工林の植生が認められます。かつては周囲の農業集落が肥料や薪として、その材木や落ち葉を利用し、管理願された雑木林です。その豊かな自然は多くの草花や鳥をはぐくんで、現代都市の海の中の楽園のごとく、のびやかな緑を現出させていました。森の北側から外周を進む道に入り、流山警察署付近に出るまで森の周囲を歩いて、公園として整理が進む様子を確認しました。市野谷の森からの帰路は、再び首都圏郊外の開発地として変貌著しい駅前へと導かれる街路進み、その趨勢を改めて観覧するものとなりました。自然と都市の調和と一口に表現しながらも、一度はその豊かな森の大半を開発しようとしたその現実は、美しいエコロジカルな印象の駅の名との相反性もあって、近年の都市開発の思想の変遷をも、それは内包するものであるとも感じさせました。


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