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大阪ストーリーズ


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#24 中之島から船場へ 〜水都と商都を象徴する風景(前)〜

 2019年9月7日、前日地元を出発した夜行高速バスで到達した大阪・なんばは、朝から酷暑を予感させる青空の下にありました。なんばHatchが入居する「難波リバープレイス」のたもとを通り、四つ橋筋へ。道頓堀川を渡ってさらに進みますと、長堀通りとの交点である「四ツ橋交差点」へと到達します。ここはかつてその名のとおり、交差する水路(西横堀川と長堀川)を横断するために4つの橋が架けられていました。高度経済成長期における道路拡幅や都市高速道路の建設のために堀は埋められ、橋は撤去されましたが、跡地には石碑があって、「水都」と称される大阪の歴史を物語っていました。

四ツ橋筋から眺める道頓堀

四ツ橋筋から眺める道頓堀
(浪速区湊町一丁目、2019.9.7撮影)


四ツ橋交差点
(西区北堀江一丁目、2019.9.7撮影)
四ツ橋跡

四ツ橋跡のモニュメント
(西区新町一丁目、2019.9.7撮影)
肥後橋

肥後橋
(西区土佐堀一丁目、2019.9.7撮影)
肥後橋から見た土佐堀川

肥後橋から見た土佐堀川
(西区土佐堀一丁目、2019.9.7撮影)
筑前橋から見た中之島のビル群

筑前橋から見た中之島のビル群
(西区土佐堀一丁目、2019.9.7撮影)

 
地下鉄四つ橋線で四ツ橋駅から北へ2駅先の肥後橋駅へ移動します。肥後橋の名は、その北詰に肥後熊本藩の蔵屋敷があったことから付近の地名とともにそう呼ばれるようになったことに由来します。中之島は北を流れる堂島川と、南の土佐堀川とに囲まれた中洲です。現在では淀川本流は北側を辿っていますが、大川、堂島川と土佐堀川、そして安治川と名を変える流路はかつての淀川本流で、中之島はその本流の中洲でした。肥後橋の名の元となった熊本藩をはじめ、中之島周辺には諸藩が蔵屋敷を構えており、全国的な経済・流通の中心としての大坂を体現する場所、それが中之島でした。現在の中之島は、変わらず大坂都心の中心業務地区として機能しています。肥後橋からはまずは土佐堀川の左岸に沿って歩を進めていきます。橋の江ウニは上には都市高速が通過していまして、水運から陸上交通へと移り変わった都市交通の変遷をそれは端的に示しているようでした。

 筑前橋(これも筑前福岡藩の蔵屋敷の所在に因みます)から中之島へ入ります。橋の上から上流方向を見ますと、肥後橋周辺の高層ビル群が正面に見えて、ビジネス街としての中之島をより鮮烈に印象づけられます。北詰には市立科学館と国立国際美術館の建物があって、現在的な意匠を町並みに加えています。田蓑橋の南詰からは、堂島川の南を辿っていきます。中之島通りの直下には、2008(平成20)年10月に開業した京阪中之島線が通っていて、東側に比べて開発が遅れていたとされる中之島西部における利便向上に大きく寄与しています。一帯はウォーターフロントとして豊かな都市景観が整えられつつあり、玉江橋の先、中之島駅付近には、「中之島バンクス」と呼ばれる飲食店エリアが整備されていました。付近にはリーガロイヤルホテルや大阪府立国際会議場(グランキューブ大阪)もあって、リノベーションされた新しい町並みが清新な佇まいをみせていました。

筑前橋から眺める土佐堀川

筑前橋から眺める土佐堀川(下流)
(北区中之島四丁目、2019.9.7撮影)
大阪市立科学館

大阪市立科学館
(北区中之島四丁目、2019.9.7撮影)
中之島バンクス

中之島バンクスの風景
(北区中之島五丁目、2019.9.7撮影)
グランキューブ大阪

グランキューブ大阪を望む
(北区中之島五丁目、2019.9.7撮影)
中之島の西端付近

中之島の西端付近
(北区中之島六丁目、2019.9.7撮影)
淀屋橋

淀屋橋
(北区中之島二丁目、2019.9.7撮影)

 中之島の西端となる船津橋の南詰から端建蔵橋を渡り、木津川に架かる昭和橋を経て新なにわ筋へと戻ります。この辺りは宙空を都市高速の高架が通り、交通量の多い道路が交差していることもあり、周囲の中小のビルによって充填された都市の風景とも相まって、どこか雑多な都会の風景が水辺に隣り合うような表情が垣間見られるエリアとなっています。土佐堀三丁目界隈のそんな路地を進んで土佐堀橋へ、ここで再び川を渡って中之島へ入って、上流方向へと歩を進めました。市立科学館の前を通り、肥後橋、そして淀屋橋へと近づく風景は、中之島を囲む土佐堀川の水面と、それに覆い被さるような高層ビル群とのコントラストが実に壮観で、現代の「水の都」たる大阪の偉観をそんぶんに探勝できるルートであると言えます。堂島川沿いに出ますと、渡辺橋のあたりにも都市高速の高架が空中を大きなアールを描いて存在していまして、そうした大都会の雰囲気をいっそう盛り上げます。

 御堂筋を通す、堂島川上の大江橋と、土佐堀川を跨ぐ淀屋橋は、いずれもモダンな意匠が目を引くコンクリート橋で、双方とも国の重要文化財の指定を受けている優美な橋梁です。1935(昭和10)年に完成したこれらの橋は、軽微な補修は行われたものの概観は当時のままで、近代都市へと変貌する大阪の街の歴史を端的の表現する事物の一つとして、今日でも多くの大阪市民に親しまれる存在です。この橋の架かる一帯を含む中之島の東半分には、日本銀行大阪支店旧館をはじめ、府立中之島図書館や大阪市中央公会堂といった洋風建築が残されていまして、中之島が藩政期から近代、そして現代に至るまで、大阪都心における重要な業務エリアの一つを担ってきたことを感じさせています。中央公会堂は1918(大正7)年竣工、中之島図書館は1904(明治37)年の竣工で、ネオ・ルネサンスやネオ・バロック様式を巧みに取り入れたデザインが、往時における大阪における経済界の趨勢を偲ばせます。

日本銀行大阪支店旧館

日本銀行大阪支店旧館
(北区中之島二丁目、2019.9.7撮影)
大阪市庁舎

大阪市庁舎
(北区中之島一丁目、2019.9.7撮影)
大阪府立中之島図書館

大阪府立中之島図書館
(北区中之島一丁目、2019.9.7撮影)
大阪市中央公会堂

大阪市中央公会堂
(北区中之島一丁目、2019.9.7撮影)
中之島公園

中之島公園(バラ園)
(北区中之島一丁目、2019.9.7撮影)
中之島の東端

中之島の東端
(北区中之島一丁目、2019.9.7撮影)

 さらに中之島を東へ進みますと、美しい水辺のプロムナードの先に、中之島を象徴する景色の一つであるバラ園を擁する中之島公園へと導かれます。初秋のバラ園にはわずかに可憐な花が残って、いまだ猛々しい日射しを受けて、しなやかな川面に向かい合っていました。難波橋の下をくぐり、天神橋の先へと歩きますと、中之島の東端に到達します。土佐堀川と堂島川に分流する上流は大川と呼ばれ、その彼方へとビル群を含む大阪の都市景観が連続していきます。天神橋の上に続く階段で橋上に出ますと、中之島周辺の風景がいっそうダイナミックに俯瞰できまして、川をゆく水上バスを穏やかに見下ろしているようでした。

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