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シリーズ京都を歩く
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20.洛中、そして洛北の山里へ ~祇園祭と晩夏の驟雨~ |
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第五十二段 祇園祭、山鉾建ての風景を歩く ~京都の伝統を跡付ける~ 2019年7月13日、久しぶりに訪れた夏の京都は、梅雨時らしい曇天の下にありました。7月の京都は、祇園祭一色となります。祇園祭は、7月1日の「吉符入」から同31日の「疫神社夏越祭」へと続く、千年の歴史を持つ祭礼です。京都駅にて荷物をロッカーに預けた後、「山鉾町」と呼ばれる、山や鉾を出す町が集積するエリアへと向かいました。この日は朝からやわらかな雨が時折降り出していました。
山鉾は全部で33基(前祭23基、後祭10基)があり、それらは形状により、曳鉾7基、曳山3基、傘鉾2基、舁き山20基に分類されます。それらの山鉾を担当する町内は概ね御池通以南、堀川通以東、松原通以北、東洞院通以西の範囲にまとまっていて、総称して「山鉾町」と呼び親しまれています。この日は7月16日の前祭・宵山に向けて、各町で順次山鉾の組み立て(鉾建てというように、山鉾の種別名の後に「建て」の文字を付けて呼ぶ)が行われていまして、四条通烏丸西入るの函谷鉾(かんこぼこ)が、四条通に面してその壮麗な姿を見せていました。前祭に向かって、山鉾建てが行われている町内を巡りました。 千年の都である京都も、四条通沿いは多くの中高層のビルが建ち並ぶ兼題都市の景観が連続していまして、その喧噪は最大の繁華街を構成する四条河原町へと連続しています。一歩大通を逸れて細い通りに入りますと、現代の建物に混じって町屋造の建物も存在していまして、新陳代謝を繰り返しながら唯一無二の都市として存立してきたこの町の矜持を感じさせます。室町通を南に入った場所には、鶏鉾(にわとりほこ)が組み上がっていました。鉾は、中心に真木(しんぎ)と呼ばれる柱が聳えています。その先端(鉾頭)は三角形に丸が象られていて、それは唐堯の時代に天下がよく治まり、訴訟用の太鼓(諫鼓)も使われずに苔むして鶏が宿ったという故事に因み、三角形の丸を鶏卵に見立てたものとも言われているのだそうです。他の山(山の場合は「真松」が取り付けられます)や鉾についても、それぞれに史実や地域の資産などを着想を得てつくられていまして、古都の伝統を存分に感じさせました。
柔らかに晩夏の雨が降り出した四条通周辺の山鉾町を訪ねる彷徨を続けます。新町通綾小路下るには、神功皇后の逸話を採る船鉾は組み上がりつつあり、鍾馗さんを庇に載せる町家を一瞥しながら、仏光寺通り南側の菅大臣神社境内を通りながら、京都らしい路地を抜けて、西洞院通を北へ。四条西洞院下るあたりには、「化粧水」の石碑があり、このあたりにかつて小野小町の別荘があることが、傍らに設置されていた看板により語られていました。再び交通量の多い四条通を歩き、横断して北側の山鉾を向かいます。土台が設営され始めていた郭巨山(かっきょうやま)前を通り、新町通に建ち始めた放下鉾を眺めつつ、南側に堂々たる姿を完成させた月鉾の偉容を確認しました。 室町通には、南から菊水鉾、山伏鉾が立ち上がって、両側が現代の建物によって充填された空間を古の雰囲気へと昇華させていました。菊水鉾は町内に存在した菊水井に基づくもので、また山伏山は山に飾る御神体が山伏を模していることに拠るものです。こうした山鉾の装飾には、盆地にあって湧水も豊富であった土地柄や、修験者との関わりも濃密であったと思われる京都の歴史も垣間見えます。再び函谷鉾の横を通過しながら、通りに面して金融機関が近代的なファサードを面する四条烏丸へと戻りました。烏丸通を横断し、四条河原町へアーケードが続く繁華街を歩きます。古来より「くじとらず」と称され、毎年巡行を先行する長刀鉾では、一年の厄病・災難除けを願うお守りである「粽(ちまき)」を求める人々が行列をつくっていました。
四条河原町を過ぎ、鴨川を渡って祇園へ、そして木々がみずみずしい緑色を呈する八坂神社境内へと進みました。祇園祭は八坂神社の祭礼です。869(貞観11)年に、都に疫病が流行したとき、その退散を願って始められた「祇園御霊会」が起源であるとされているのだそうです。八坂神社から円山公園へと向かいますと、枝いっぱいに緑の葉を繁らせたしだれ桜の向こうには、梅雨空にしっとりとした色彩を呈する、滴る東山の山並みが、たおやかに広がっていました。 |
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