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関東の諸都市・地域を歩く
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#99 武蔵小杉を歩く 〜タワマンが林立する町並みをめぐる〜 2016年4月4日、神奈川県内の桜を訪問する行程の中で、武蔵小杉を訪れました。天候は生憎の雨模様で、ビル風が吹きすさぶ早朝の駅前は、強風にあおられながらも多くの人々が駅へ向かう姿が見られました。武蔵小杉駅はJR南武線と東急東横線の接続駅として機能してきましたが、駅の東側をかすめて通過するJR横須賀線にも2010(平成22)年3月に同駅のホームが完成し、利便性が格段に向上しました。武蔵小杉駅からは東横線のターミナルである渋谷駅のほか、同線の行き先である横浜駅、横須賀線を通過する総武快速線や湘南新宿ラインを介して東京駅や新宿駅、池袋駅にも直通で向かうことができます。こうした都心や横浜・川崎への好アクセスが注目され、武蔵小杉はいわゆる「住みたい町ランキング」でも上位の常連となっています。タワーマンションが多く立地する駅前の偉観を概観しながら、駅前の散策をスタートさせました。
渋谷駅から東横線に乗車し、15分ほどの時間で多摩川を渡り到達する武蔵小杉は、行政的には川崎市中原区に位置しています。多摩川の右岸に沿って東西に細長い市域を持つ川崎市は、東京から放射状に伸びる鉄道路線が南武線と接続する位置に独立して結節的な中心地があって、それぞれが都心と結びついているため、それらの東西間の結びつきは比較的弱い傾向にあると言えます。こうした結節点は武蔵小杉のほか、武蔵溝ノ口(東急田園都市線)や登戸(小田急線)などがありますが、武蔵小杉は上述のとおり交通網の充実度では一つ抜ける存在であると言えます。人口の増加に合わせて商業施設も充実してきていまして、首都圏全体を見渡しても希有な活気と開発ラッシュに沸く巷であるように感じられます。 駅前の喧噪を離れますと、国道409号(府中街道)沿いなどにはやや時代を経た商店街も散見されます。武蔵小杉はこの府中街道沿いと、北側を東西に進む県道45号(中原街道)沿線が元来からの町場が形成される場所でした。武蔵小杉駅のある一帯は、鉄道の敷設前は一面の田園地帯であったようで、駅を中心として成長した新市街地が、古くからの町並みと一体化しながら、駅を中心とした商業地へと再編成されていった過程が、駅周辺の商業施設群と街道に面した商店との対比により垣間見られました。そうした農村地帯であったこの地域を潤していたのが二ヶ領用水で、現在でも市街地かが進んだ町並みの中を用水がふんだんに水流を運んでいます。川沿いにはソメイヨシノも植えられていまして、この日は満開を迎えていて、雑踏の中に桜色の雅を添えていました。周辺には東福寺や市ノ坪神社なども佇んでいまして、そうした地域の変遷を伝えていました。
二ヶ領用水の桜をしばし観賞した後は、法政大第二高校へと続くことからその名があると思われる法政通りの商店街風景を一瞥して府中街道に戻り、新旧の商業地が入り交じるような景観が続く沿道を北西へと進みました。高層マンションが背後に見える風景に目を奪われながら、中原警察署や中原区役所の前を通過していきます。こういった機関の存在は、武蔵小杉が中原区の中枢管理機能の所在地としても機能していることを示しています。区役所の前で、二ヶ領用水から渋川が分流しています。この渋川沿いにも豊かなソメイヨシノの並木があって、見頃を迎えていました。 前項でもご紹介していますとおり、渋川は川のほとりに散策路が整備されていまして、桜の下を川に沿って散策することができるようになっています。川の両側はいっぱいに花を付けた桜の枝が届きそうな位置にまで住宅やマンションが迫って、渋川の流れだけが、ここがかつて農村地域であった過去を物語っていました。二ヶ領用水と渋川の分流点にある水門の近くには、「渋川と水車」と題された説明が記載された標柱が設置されていました。明治の中頃までは、多くの水車があって、製粉に活躍していたとのことです。明治期の地勢図にもある大乗院の背後に武蔵小杉駅前の超高層マンションが立つ構図も、端的にこの町の性質を象徴しているもののように感じられました。
中原区役所前へ戻り、南武線の高架の北側に沿って武蔵小杉駅方面へと戻ります。駅の周辺はあまねく建物によって充填されていまして、この町の趨勢を改めて実感させられます。古くからの市街地の間を埋めるように、高層マンションの建設は現在進行形で行われています。武蔵小杉は元来大規模な製造業が操業していまして、そうした工場の跡地も高層マンションや商業施設進出の受け皿となりました。都心に近く、ほどよい商業機能と医療施設が集約された町並みは、さらなる進化を遂げようとしているようでした。 |
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