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関東の諸都市・地域を歩く


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#111 埼玉県寄居を歩く 〜荒川の谷口に開けた要衝の風景〜

 2016年11月5日、地元から電車に乗り羽生駅へ、秩父鉄道に乗り換えて埼玉県北部における交通の要衝のひとつである寄居へと到達しました。寄居駅は東京から放射状に延びる交通路線のひとつである東武東上線の終着駅です。そこに秩父鉄道線とJR八高線が接続しています。駅構内の跨線橋からは、なだらかな山並みに囲まれた寄居の町並みを望むことができました。

寄居駅

寄居駅より役場を望む
(寄居町寄居、2016.11.5撮影)
中心市街地

寄居の中心市街地の風景
(寄居町寄居、2016.11.5撮影)
中心市街地東端のクランク

寄居市街地東端のクランク
(寄居町寄居、2016.11.5撮影)


玉淀水天宮
(寄居町寄居、2016.11.5撮影)
荒川

玉淀水天宮付近から荒川を望む
(寄居町寄居、2016.11.5撮影)
荒川

正喜橋(しょうきはし)上から荒川を望む(下流方向)
(寄居町寄居/鉢形、2016.11.5撮影)

 寄居はこれまで山中を流れてきた荒川が関東山地から関東平野へと出る位置に発達した、いわゆる「谷口集落」と呼ばれる町場です。秩父往還(現在の国道140号がおおよそそのルートを踏襲しています)上の重要な宿駅として機能していました。駅南口を出発し、玉淀駅方面へ穏やかな市街地を進みます。本町交差点で交差する県道296号の道筋が寄居の中心市街地です。明治期の地勢図を確認しても、荒川左岸の開けた平坦地を貫通する往還上に発達した街村としての町並みが表現されています。現在はこの昔からの市街地の北に駅ができて、さらにその北側に国道がバイパスとして通過し、その間の空間の市街化も進んでいます。寄居の中心市街地は訪れたこの時も幹線道路に面して商店街が形成されていまして、蔵造りの建物と現代の建築物とが混じり合う穏やかな景観によって整えられていました。

 玉淀駅の手前でクランクする道路の形状は藩政期と変わらないものです。そのまま東上線の鉄路に沿って住宅地を進みますと、程なくして荒川のほとりへと到達します。河畔の林の間からはあらかわのながれがきらきらと秋の日射しを受けているのが見えます。閑静な宅地の囲まれるようにして、玉淀水神宮が祀られています。「玉淀(たまよど)」とは、この寄居市街地の南一帯の荒川の河原の名称です。現地に設置された表示板によりますと、1931(昭和6)年に「玉淀」と命名されたとのことのようです。水天宮は玉淀の名が生まれた際に神社を造営しようとした際に水神を祀った祠があることが分かり、社殿を建立し水天宮としたものであるとのことです。県道30号を横断し川に沿って歩きますと、玉淀の河川敷へと下りることができる場所へと辿り着きます。川の南岸は鉢形城跡であり、その要害は荒川の作る絶壁の上に存立していました。豊かな緑と川を洗う岩、木々を映す穏やかな淀みの色彩とが、晩秋から初冬へと移り変わる途上のゆるやかな日の光に照らされて、のびやかな情景を現出していました。

玉淀

玉淀の風景
(寄居町寄居、2016.11.5撮影)
玉淀

玉淀・鉢形城跡下の絶壁
(寄居町寄居、2016.11.5撮影)
宗像神社

宗像神社
(寄居町藤田、2016.11.5撮影)
少林寺

少林寺
(寄居町末野、2016.11.5撮影)
善導寺

善導寺
(寄居町末野、2016.11.5撮影)
正龍寺門前

正龍寺門前から望む山並み
(寄居町藤田、2016.11.5撮影)

 玉淀の風景を探勝した後は、寄居市街地を取り巻く後背地の神社や寺院を訪ねる道程となりました。701(大宝元)年に荒川の氾濫を鎮めるために宗像大社の分霊を勧請したと伝えられる宗像神社は、穏やかな社叢をまとって青空の下に佇むようにしてありました。町を見下ろす鐘撞堂山の山麓には多くの寺院があって、地域の信仰の歴史を今に伝えていました。少林寺(曹洞宗)は1511(永正8)年の開山で、小規模な谷筋を分け入った場所に建立されています。善導寺(浄土宗)は1297(永仁5)年創建の寺が徳川家康入府後に再興されたもの、正龍寺(曹洞宗)は12世紀中葉に創建された寺院を1348(貞和4)年に臨済宗の寺として号したとされる来歴を持ちます。寺院の境内から俯瞰する寄居の風景は、たおやかな山並みに包まれるようにして広がっていまして、平地から山間へと進む往還を行く人々の心を今も昔も癒やしているように感じられました。

※このフィールドワークは、同日開催の東武鉄道・秩父鉄道合同開催のハイキング「荒川がつくり出す奇岩の景勝地を訪ねるハイキング」に参加することにより実施しました。

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