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東京優景 〜TOKYO “YUKEI”〜

#87(豊洲編)のページ

#88 清瀬市を横断する 〜柳瀬川から志木街道をたどる道〜 (清瀬市)

 2020年10月14日、久しぶりの東京訪問の目的地として、多摩地域北部の清瀬市を訪れました。埼玉県域に楔のように北東方向に飛び出す形は、東京都の地図を見ると最も目に留まりやすい都市の一つではないでしょうか。そのため、群馬県の筆者の居住地からこのまちを訪問するにあたって選んだ出発地点は、JR武蔵野線の新座駅でした。駅を出発して隣の国道254号を横断、新座貨物ターミナル駅の施設の北側を沿うよう関越自動車道の下を通過、高速の側道を北へ、JR線をくぐって柳瀬川沿いに出ました。

下宿三丁目付近

下宿三丁目の景観
(清瀬市下宿三丁目、2020.10.14撮影)
柳瀬川

柳瀬川
(清瀬市下宿二三丁目、2020.10.14撮影)
城山神社

城山神社(滝の城址)
(所沢市城、2020.10.14撮影)
柳瀬川回廊

柳瀬川回廊
(清瀬市下宿二丁目、2020.10.14撮影)

 柳瀬川の上流部の河谷は、東京都と埼玉県の都県境にほど近い、山口貯水池として利用されています。そこから武蔵野台地をを北東方向へ流れ、新河岸川を経て荒川へと至ります。周辺の入間川などの他の荒川の支流とともに、かつては多摩川の流路であった時代もあったと言われています。清瀬市では、柳瀬川を中心に、流域の水辺、緑、親水施設、文化財を、遊歩道によりネットワーク化し、水と緑の回遊空間としての「柳瀬川回廊」を構想しているとのことで、穏やかな緑に恵まれた川沿いを歩きます。対岸は所沢市の範域となりますが、そこには戦国時代の城郭跡である滝の城の遺構が残ります。崖上の城跡はその大部分が城山神社の境内地となり、崖下の川沿いの低地一帯は公園として運動場などが整備されています。

 再び柳瀬川の右岸側に戻り、桜並木が続く遊歩道を進みます。柳瀬川の流れはとても透明度が高い印象で、大都市圏郊外の住宅地域を流れる川としては、かなり良好な水質が保持されているようでした。川に沿ってススキなどが生える穏やかな小道を進んでいきますと、やがて清瀬金山緑地公園へと到達しました。この公園は「武蔵野の風と光」をコンセプトに整えられたもので、豊かな植生と、噴水のある水辺が調和する憩の場として市民に供されています。公園のある場所は、柳瀬川の氾濫原が少しだけ拡大している部分で、この地域は河道を越えて左岸側に清瀬市域が伸びている格好です。

清瀬金山緑地公園

清瀬金山緑地公園
(清瀬市中里六丁目、2020.10.14撮影)
中里六丁目市有林

中里六丁目市有林
(清瀬市中里六丁目、2020.10.14撮影)
清瀬第八小付近の並木景観

清瀬第八小付近の並木景観
(清瀬市下清戸二丁目、2020.10.14撮影)
都営アパートの風景

都営アパートの風景
(清瀬市中清戸四丁目、2020.10.14撮影)

 川に沿って清瀬台田住宅の建物が建ち並ぶ左岸側の段丘崖をゆるやかに上がる道を進みます。段丘崖には雑木林が穏やかに残されていて、地域の貴重な自然環境として保全がなされているようでした。秋も徐々に深まりつつある季節ですが、林の木々は青々とした葉を未だ繁らせていまして、やがて訪れる落葉の季節を前に、静かに佇んでいるように感じられました。崖上に出ると、武蔵野台地の一角を占める平坦な地形となって、住宅地の間に畑地が点在する、現代の武蔵野の風景が連続していきます。第八小学校の南側にはやはり武蔵野台地の歴史を感じさせる雑木林が残されていまして、市道の歩道に瑞々しい緑陰を提供してくれていました。

 道路の両側に都営アパートが建ち並ぶ一角を進みますと、訪問時は新庁舎建設中で足場に覆われていた清瀬市役所前へと辿り着きました。市役所前の交差点を南へ、トウモロコシの植えられた畑地と、戸建て住宅の並ぶ住宅地とが交錯する土地利用の台地上を歩き、ケヤキ並木が美しい志木街道へ。志木街道は台地上に粗放的な農地という土地利用が卓越した武蔵野台地上にあって、古来より重要な交通路として開かれた街道筋でした。地形図を見ると、街道を中心に短冊状の土地割りがなされているのが見て取れます。美しいケヤキ並木の下、現代の住宅地に紛れるように蔵造りの建物があったり、長命寺や金龍寺、日枝神社などの古刹・古社が佇み、歴史を今に伝えています。

志木街道の景観

志木街道の景観
(清瀬市中清戸四丁目、2020.10.14撮影)
長命寺

長命寺
(清瀬市下清戸二丁目、2020.10.14撮影)
日枝神社

日枝神社
(清瀬市中清戸二丁目、2020.10.14撮影)
清瀬駅前の景観

清瀬駅前の景観
(清瀬市上清戸一丁目、2020.10.14撮影)

 古い建物がケヤキ並木の緑のトンネルに程よく調和する志木街道を西へ辿りながら、上清戸一丁目の交差点を南に折れて西武池袋線の清瀬駅へと向かい、この日の清瀬市の町歩きを終えました。簡素な駅舎ながらも、駅前には西友を各店舗とした商業施設もあって、郊外における商業中心の一つとして、一定の機能を保持している様子を垣間見ました。

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