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関東の諸都市・地域を歩く
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#58 続・湘南遥歩 〜海岸と江の島の風光に触れる〜 2009年2月8日、穏やかに晴れ渡ったこの日、1月以来の湘南を再訪しました。前回の湘南フィールドワークを終えたJR茅ヶ崎駅から踏破をスタートさせ、松林が点在する穏やかな住宅街を抜け、防砂林の松並木をくぐって、海岸へ出ました。空には雲ひとつなくて、輝かしい大海原が、すんだ冬の空気そのままに広がっていました。真っ白い富士山もくっきりと望むことができまして、沖には湘南のシンボルの一つである「烏帽子岩」こと姥島の岩礁群もはっきりと認めることができました。
海岸には防砂林に守られるようにサイクリングロードが並行していて、さわやかな散策を楽しむことができるようになっていました。関東地方1都6県を通過するハイキングコースである「関東ふれいあの道」の一区間「湘南海岸・砂浜のみち」のルートも兼ねているようで、サイクリングを楽しむ人のほか、ウォーキングやジョギングを行う人もたくさんいまして、近隣住民の身近な憩いの場所となっていることがうかがわれました。海にはサーフィンを楽しむ人々も大勢繰り出しています。サイクリングロードを東へ、鵠沼・片瀬方面へと向かいます。 かつて近代初期までは砂丘が卓越し、松林のほかは積極的な土地利用がなされてこなかったは、前回の「湘南遥歩」の項で触れました。国道134号をその後進とする開発道路の建設や、穏やかな海と豊かな緑が「風光」という価値観の中で保養地として注目され、湘南エリアは見る見るうちに「美しい自然に囲まれた現代的な住宅地」へとその姿を変えてきました。砂浜に沿った快適な散策路を歩いていても、その豊かな緑と水に彩られた景観は強烈に実感されます。歩を進めるごとに松林の緑は陽光を軽やかにはらんできらめき、海面もとびきりの青でその光彩を漲らせます。彼方に見えている江の島も東へ進むにつれてだんだんと大きさを増してきます。鵠沼橋で引地川を越えますと、いよいよ湘南の一大観光地・江の島も間近になってまいります。
片瀬地区は、マリンスポーツや江の島観光をめぐる一大レクリエーションエリアとして、また風光と都心へのアクセスの利便性とを兼ね備えた高級住宅地として、洗練された都市景観を呈しているように感じられます。小田急の片瀬江ノ島駅に接して境川に架かる弁天橋は、中央にアーチ状の装飾とモニュメントが設置されており、橋全体でヨットの形をイメージしているようです。新江ノ島水族館を一瞥しながら、竜宮城を模した片瀬江ノ島駅から電車に乗り藤沢本町駅で下車し、旧東海道筋に位置する藤沢の旧市街地へと向かいました。藤沢本町駅周辺は駅自体のコンパクトさもあいまって昔ながらの近隣商店街の印象で、このあと訪れた現代的なターミナルとなっているJR藤沢駅前の喧騒とは好対照でした。 国道467号がかつての東海道で、藤沢の町のオリジンである藤沢宿の町場が展開したエリアです。住居表示も「藤沢」や「本町」を名乗っていて、ここが藤沢の町の起源であることを示しています。東海道の宿場町として、時宗総本山清浄光寺(しょうじょうこうじ;「遊行寺」の通称で知られる)の門前町として、江の島詣での拠点であったこのエリアは、中層のマンションや現代建築の間に所々に町屋や土蔵にかつての姿をを残しているのが印象的でした。旧街道筋は国道を北へ折れ、遊行寺門前へ続く朱色の遊行寺橋を超えて門前に至り、東へ曲がって県道30号へ出て、北へ向かっていました。藤沢橋は関東大震災後の架橋のようで、藤沢宿の東の入口(遊行寺門前)は3つのクランクで構成される鉤の手になっており、東海道では「3曲がり」として有名であったようです。この部分の道路は道幅が広く取られ、「藤沢広小路」と呼ばれました。上野広小路、名古屋広小路とともに「日本三大広小路」のひとつと呼ばれたそうです。
旧藤沢宿から江の島へ向かう古くからの道路をほぼ踏襲している国道を南へ進み、現在の藤沢の中心市街地となっている藤沢駅前へと出て、江ノ島電鉄線で江ノ島駅へ向かい、江の島を目指しました。多くの観光客であふれる江の島は、修験の地から参詣の地へ、そして現在の観光地へとその性格を変えながらも、今も昔も多くの人々をひきつけていました。急峻な参道にはエスカレータ(有料、「エスカー」と呼んでいます)も併設されて、訪れやすいように整備された江の島島内は、その歴史性を土台にしながら、豊かな緑と変化に富んだ景観が融合して、明るい湘南のイメージと重なっているところが、ここで指摘するのも今更な気もいたしますが、最大の魅力なのだと思いましたね。 江の島の景勝に触れ、鎌倉大仏を久しぶりに拝観した後、夕闇の鎌倉市街地を少し歩いてこの日の活動を終えました。都心から最も身近な観光地の一つとして、変わらぬ輝きを持つ湘南海岸は、多くの人々の思いを溶け込ませながらそれぞれがかけがえのないポートレートとなって、その底抜けに明るいイメージを発信し続けていくことになるのでしょうか。 |
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