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関東の諸都市・地域を歩く


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#147 奥日光、中禅寺湖から西ノ湖へ ~高原の清爽な風景をめぐる~
 
 2018年6月9日、梅雨入り後の晴天に恵まれた奥日光を訪れました。東武日光駅から路線バスに乗り換えて中禅寺温泉バス停へ。そこから晴天の中禅寺湖周辺へと歩を進めました。立木観音入口交差点には二荒山神社の朱色の鳥居が建てられていまして、古くは信仰そして修行の地であった奥日光の歴史を端的に示していました。まずは交差点を左折し、中禅寺(立木観音)賛同の石碑の建つ、湖の東岸をたどりました。背後には、男体山の山容をくっきりと望むことができます。

二荒山神社鳥居

二荒山神社鳥居
(日光市中宮祠、2018.6.2撮影)
ベルギー王国大使館別荘

ベルギー王国大使館別荘
(日光市中宮祠、2018.6.2撮影)
ベルギー王国大使館別荘

ベルギー王国大使館別荘から男体山を望む
(日光市中宮祠、2018.6.2撮影)
中禅寺(立木観音)山門

中禅寺(立木観音)山門
(日光市中宮祠、2018.6.2撮影)
立木観音から中禅寺湖を望む

中禅寺(立木観音)から中禅寺湖を望む
(日光市中宮祠、2018.6.2撮影)
イタリア大使館別荘記念公園

イタリア大使館別荘記念公園内の建物
(日光市中宮祠、2018.6.2撮影)

 右手に中禅寺湖の穏やかな湖面を眺めながら、緑に覆われた県道を進みます。奥日光は、近代以降、東京に近い高原に位置する湖水のある地域ということから、ヨーロッパ諸国を中心に多くの国々の大使館が避暑地として別荘を建設したことで知られます。中禅寺湖畔には現在でもそのかつての別荘がいくつか残されていまして、一部は一般に開放されています。ベルギー王国大使の別荘はこの日は期間限定で公開をしており、列に並んで内部を観覧させていただくこととしました。西に湖を望むロケーションはまさにヨーロッパのとある場所の湖水のある風景のようで、夏場の冷涼な気候も手伝って、欧州からはるばるこの極東の地に赴任していた人々の郷愁を誘ったことと想像いたしました。こうした外国人の進出等により、信仰の舞台であった奥日光は、次第に観光地としても脚光を浴びていくこととなります。

 立木観音の名で知られる中尊寺を参詣後、さらにその南の森の中にあるイタリア大使館別荘記念公園へ。半月峠へと向かう県道から分かれて、新緑に包まれた小道を進んだ先に、瀟洒なファサードの大使館別荘の建物がひっそりと佇んでいました。湖に向かってテラスを設けた上に建てられていまして、湖岸にはボートを係留する小さな桟橋も設けられていました。別荘の中から、窓の枠越しに望む中禅寺湖と背後の山々が重なる光景は、まさに一幅の絵画を見てるかのような感慨がありました。諸外国の大使やその家族たちがつかの間の休息を過ごしたであろう往時を思いながら、新緑も徐々にその濃さを増しつつある湖岸を歩き、二荒山神社の鳥居の前まで戻りました。ここからは、中禅寺湖の北岸を散策していきます。

別荘内からの風景

イタリア大使館別荘内からの風景
(日光市中宮祠、2018.6.2撮影)
イタリア大使館別荘記念公園

イタリア大使館別荘記念公園
(日光市中宮祠、2018.6.2撮影)
ホテルなどが建ち並ぶ風景

ホテルなどが建ち並ぶ風景
(日光市中宮祠、2018.6.2撮影)
湖畔展望テラスからの風景

湖畔展望テラスからの風景
(日光市中宮祠、2018.6.2撮影)
二荒山神社と男体山

二荒山神社と男体山
(日光市中宮祠、2018.6.2撮影)
西六番園地

西六番園地
(日光市中宮祠、2018.6.2撮影)

 この日は本当に爽快な晴天に恵まれまして、男体山もくっきりとその美しい山体を見せていましたし、6月の日射しを浴びた湖面は鏡面のようにきらめき、瞬いていました。湖畔園地と呼ばれる一角を過ぎ、国道を挟んで反対側にある湖畔展望テラスから中禅寺湖を一望しました。付近には華厳の滝もあることから、旅館や土産物店などが軒を連ねていまして、観光客の多い巷となっています。日光二荒山神社は、下野国一宮で男体山を御神体としています。神社の裏手より男体山の登山道が続いています。ここからは、国道120号と湖の岸との間につくられた中禅寺湖周回線歩道を歩きます。今回は北西の菖蒲が浜までの踏破でしたが、全体としては約25キロメートルほどの周回歩道とのことで、健脚のハイカーたちが日々訪れているようでした。

 湖の小波が岸に寄せる穏やかな音と、新緑のみずみずしい色彩にい癒やされながら、アップダウンのほとんど無い、歩きやすい遊歩道を歩きます。途中には、「西六番園地」と呼ばれる、かつて別荘があった跡地が急速場所として再整備された場所があります。この別荘は長崎のグラバー園で知られるトーマス・グラバーの別荘として1893(明治26)年に建てられたものです。その後いくつかの変遷や立て替えを経ましたが、1940(昭和15)年に焼失、現在はマントルピースを残すのみとなっています。湖岸には乗り出すように石積みがつくられていまして、別荘内部から美しく湖を眺めることができたことと想像しました。この後も、落葉広葉樹の葉と葉の間からこぼれる穏やかな木漏れ日を受けながら、しなやかな色合いの森の中を歩きます。最も西側の別荘地跡である西十三番園地を過ぎ、ボートハウスを訪問しながら菖蒲が浜へ。ここから遊覧船に乗って湖西側の千手ヶ浜へと向かいました。船上から眺める中禅寺湖とその周辺の風景もとても美しく、湖面を渡る風もどこまでも清涼でした。およそ15分ほどの所要で、クリンソウの群生地として知られる千手ヶ浜ヘ到着しました。

中禅寺湖周回歩道

中禅寺湖周回線歩道の風景
(日光市中宮祠、2018.6.2撮影)
遊覧船上からの風景

遊覧船上からの風景
(日光市中宮祠、2018.6.2撮影)
千手ヶ浜のクリンソウ群落

千手ヶ浜のクリンソウ群落
(日光市中宮祠、2018.6.2撮影)
西ノ湖湖岸の森

西ノ湖湖岸の森
(日光市中宮祠、2018.6.2撮影)
西ノ湖

西ノ湖
(日光市中宮祠、2018.6.2撮影)
戦場ヶ原

戦場ヶ原の風景
(日光市中宮祠、2018.6.2撮影)

 クリンソウはこの年も極上の輝きを持って迎えてくれていました。その可憐な花を目にとどめた後は、さらに西へ約2.4キロメートルほどの場所にある西ノ湖(さいのこ)を目指しました。ミズナラやハルニレ、ヤチダモなどが穏やかに生育する森はどこまでも涼やかで、太古の昔より変わらずあり続ける、自然の尊さを実感させます。西ノ湖周辺には何一つ人工物はなくて、秘境の中に佇む天然の箱庭の中にいるような心境になりました。西ノ湖からは小田代ヶ原方面へ山道を進みます。この辺りにはシラカンバやカラマツなどの木々もまっすぐに幹を延ばしていまして、冷涼な奥日光の気候を反映していました。やがて、赤沼と千手ヶ浜を結ぶ低公害バスが通過する停留所へとたどり着き、バスが来るのを待ち、この日の活動を終えました。初夏の中禅寺湖畔は自然がつくりだす、この上のない風景の宝庫で、その慎ましやかな輝きに心を躍らされました。


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