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みすずかる信州絵巻


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#8 上田市街地とその周辺を歩く(前) 〜上田城を中心に広がる町並み〜

 2018年4月7日、早朝に出発して上信越自動車道を進み、午前7時前に上田城の駐車場に到着しました。まだ日の出間近い空は乳白色に沈んでいまして、周囲の山々に雲を纏わせて、駐車場から上田城跡公園内へと進む途上のソメイヨシノの桜色と同化していました。空気はまだひんやりとしていまして、山深い盆地の気候を感じさせました。

上田城跡公園の桜

上田城跡公園の桜
(上田市二の丸、2018.4.7撮影)
上田城跡北虎口

上田城跡公園、北虎口と雲を纏った山々
(上田市二の丸、2018.4.7撮影)


上田城跡の堀・隅おとし
(上田市二の丸、2018.4.7撮影)
上田城跡

上田城跡・堀端の桜
(上田市二の丸、2018.4.7撮影)
上田城跡・東虎口

上田城跡・東虎口
(上田市二の丸、2018.4.7撮影)
真田石

真田石
(上田市二の丸、2018.4.7撮影)

 上田は長野県東部、千曲川上流域における中心都市で、より広域的には佐久平と呼ばれる佐久盆地周辺エリアをもその経済圏に含む、長野県下第三の都市です。上田城は、真田氏が本拠を置き築城したことで知られます。その後の変遷で破却と再興がなされて藩政期を過ごし、現在は石垣をはじめとした遺構が残り、櫓や門などが復元された上田城跡公園となって、人々の憩いの場となっています。水抜きのための石樋や、枡形となっている北虎口の石垣の間を縫って、堀が周囲を巡る本丸へと進みました。本丸の北東端の土塁は一部切り込まれていまして、「隅おとし」と呼ばれます。これはこのような構造とすることで「鬼門除け」としたもので、上田城の大きな特徴の一つであるということです。堀に面した桜も見頃を迎えていまして、朝の静かな空気の下で落ち着いた風情を漂わせていました。

 桜に包まれた堀端を進み、本丸への東虎口へ。正面の櫓門は1994(平成6)年に史料や調査に基づき復元したものですが、左右の櫓は明治に入り民間に払い下げられていたものを、1949(昭和24)年に元の位置に移築したものです。虎口の石垣の一角に、「真田石」と呼ばれる巨石があります。真田氏が松代へ移封となった際にそれを移動させようとしたところ動かなかったという伝承が残ります。真田神社を参詣後、江戸時代の位置のまま現存する西櫓を一瞥し、桜がいっせいに咲き誇る公園内をそぞろ歩きました。枡形を形成している西虎口の脇から坂を下り、本丸の南側に出ますと、本丸が堅牢な崖の上に形成されていることを実感できます。この崖は千曲川の分流である「尼ヶ淵」が形成したもので、城を「天然の要塞」としていました。石垣が崖に沿って積み上がる光景は、戦国時代における城塞の姿を鮮烈に印象づけます。散策路はそのまま二の丸の堀跡につくられた「けやき並木遊歩道」となって、東から北へ続いていきます。

真田神社

真田神社
(上田市二の丸、2018.4.7撮影)


上田城跡公園の桜
(上田市二の丸、2018.4.7撮影)
上田城跡公園

上田城跡公園の堀と桜
(上田市二の丸、2018.4.7撮影)
上田城跡公園

上田城跡公園の桜(西虎口付近)
(上田市二の丸、2018.4.7撮影)


上田城跡公園・西虎口付近から坂下へ下る
(上田市二の丸、2018.4.7撮影)
上田城跡

上田城跡・西櫓を見上げる
(上田市天神二丁目、2018.4.7撮影)

 この堀跡には、1972(昭和47)年まで上田市北東部、真田地域へと伸びていた電車が走っていまして、一部にプラットホーム跡も残されています。堀の上へと進み、市役所前を通過しながら、上田高校の校地へと市街地を辿っていきます。堀に囲まれた同校の敷地は、上田藩主の居館があった場所にあたります。上田城の三の丸であったこの場所は、廃城となっていた上田城本丸に変わる政庁の所在地として、藩政期と通じ機能しました。堀に面して建つ屋敷門が、そうした陣屋跡としての歴史を伝えていました。上田市の伝統的な中心市街地は、横町から海野町、原町、柳町、紺屋町へと続く旧北国街道筋であり、上田城跡や「御屋形」と呼ばれた藩主居館を東から北へ取り巻くように城下町が形成されていました。

 その中心市街地から上田駅前まで、河岸段丘を切り崩してつくられた新興の通り松尾町です。その駅前通りを進み、新幹線駅として真田の六文銭の意匠が施された上田駅前へと至りました。北陸新幹線の開業と合わせて駅前の再開発が行われたようで、駅前には再開発ビル「パレオ」が建てられて、上田市の表玄関としての表情を一新させていたようでした。南側の別所温泉方面へ路線を延ばす上田電鉄線も含めて橋上となった駅舎の下は南北自由通路となっていまして、「温泉口」と呼ばれる南口へとスムーズに抜けることができます(北口は「お城口」と呼ばれているようです)。穏やかな市街地を通りますと、千曲川の流れは目と鼻の先にありました。


上田城跡・尼ヶ淵と石垣

上田城跡・尼ヶ淵と石垣
(上田市天神二丁目、2018.4.7撮影)
二の丸堀跡

二の丸堀跡「けやき並木遊歩道」
(上田市二の丸、2018.4.7撮影)
上田藩主居館跡・屋敷門

上田藩主居館跡・屋敷門
(上田市大手一丁目、2018.4.7撮影)
上田駅前・パレオ

上田駅前・パレオ
(上田市天神一丁目、2018.4.7撮影)
上田駅

上田駅
(上田市天神一丁目、2018.4.7撮影)
千曲川

上田駅近くの千曲川
(上田市天神四丁目、2018.4.7撮影)
塩田平の風景

塩田平の風景(別所線車窓より)
(上田市、2018.4.7撮影)
別所温泉駅

別所温泉駅
(上田市別所温泉、2018.4.7撮影)

 上田駅に戻り、上述の上田電鉄別所線のホームへと向かい、上田市街地からは一旦離れて、別所温泉駅へと向かってみることにしました。すぐに橋梁で川を越えて対岸の市街地を抜けた電車は、程なくしてたおやかな田園風景の只中を走るようになりました。およそ30分の所要で、こぢんまりとした駅舎の別所温泉駅へ。桜が美しく咲き誇る温泉街へと散策をスタートさせました。

(後半へ続きます)

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