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シリーズ・クローズアップ仙台

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#66 都市計画道路・北四番丁大衡線を歩く 〜仙台都市圏の新南北軸〜

 高度経済成長期を経て、仙台市はいわゆる支店経済都市として地方ブロックを統括する中枢管理機能が強化され、飛躍的な人口増を見せました。それに伴い都市圏は郊外へ大きく拡大し、開発が比較的容易であった丘陵地域を中心に大規模な宅地開発が進められていたことは、この「クローズアップ仙台」でもしばしば言及してきました。中でも市の北部、泉区内では仙台市との合併を挟んで多くの住宅団地が完成し、地下鉄南北線のターミナルである泉中央駅周辺では戦略的な区画整理や施設の建設が進められ、仙台大都市圏内の「副都心」のひとつとして目されるようにもなっています。現在ダイナミックな宅地化は市境を超えて北の富谷町内へも広がっているようです。そうした仙台大都市圏北部エリアの急激な人口増は都心エリアとの交通需要を増大させた一方で、都心と泉区方面とを結ぶ主要な幹線道路は県道仙台泉線(旧国道4号)しかなく、慢性的な交通渋滞が社会問題化しつつありました。そのため仙台市北部へ連なる新たな幹線道路として計画されたのが、今回ご紹介する「都市計画道路・北四番丁大衡(きたよばんちょうおおひら)線」です。大和町宮床から仙台市に入り泉パークタウン、長命ヶ丘・加茂、桜ヶ丘、北山を経て東北大学病院の東で国道48号(北四番丁)に接続する、一大幹線道路です。

泉中央駅前

泉中央駅前の景観
(泉区泉中央一丁目、2009.5.23撮影)
将監沼

将監沼
(泉区将監八丁目、2009.5.23撮影)
将監

将監団地の景観
(泉区将監三丁目付近、2009.5.23撮影)
桂

泉パークタウンの団地景観(桂地区)
(泉区桂二丁目付近、2009.5.23撮影)

 地下鉄泉中央駅を中心に商業機能やマンションなどが集積し、泉中央エリアは郊外における都市核として成長しています。道路網もこのエリアから放射状に周囲の住宅団地を連絡していまして、多くのバス路線が泉中央駅へと向かって設定されています。北側には、そうした大規模団地のひとつ、将監(しょうげん)団地があります。1960年代後半(昭和40年代)に開発されたこの団地は、伊達政宗の命を受け支倉常長を迎えに行った横澤将監が、根白石地区から水を引いて造成した将監沼がその名の由来になっているのだそうです。ここから西、、高森、寺岡、桂、紫山の4地区(開発順)は「泉パークタウン」として一体的に分譲された住宅団地群です。団地の中には将監沼と似たような形状の沼が点在しています。これらは「堤」とよばれる人工的な溜池で、主に農業用水の供給源としての役割を果たしました。現在の住宅団地の多くはこうした溜池の存在した丘陵に開発されています。北四番丁大衡線は泉パークタウンを縦断し、七北田川方面へとゆるやかに下っていきます。

 団地南端の寺岡一丁目交差点から根白石方面へのバス通り(県道35号)までの間は七北田川の作る河岸段丘の間に発達した比較的平坦な地形(河岸段丘面)で、水田としての土地利用が卓越しています。段丘面へ引水するためにつくられたのが上述の堤です。このような田園風景は、河岸段丘に沿って形成される斜面林や川の流れ、周囲のたおやかな丘陵や山岳のアウトラインなどと並び、泉区のゆたかな原風景であるといえるでしょう。北四番丁大衡線はそうした水田地帯を抜け、七北田川を越えて、再び丘を登り始めます。
1974(昭和49)年から79(昭和54)年にかけて整備された長命ヶ丘団地とその3年後に開かれた加茂団地の間を貫通し、道路は市街地方向へ進んできます。道路と団地の間には十数メートル程度の緑地帯が設けられており、住環境の保全が図られています。

団地遠景

桂から南方向。低地は水田、丘陵は団地の土地利用が分かる。
(泉区桂二丁目、2009.5.23撮影)

※写真中央を切り通しで東北道が横切っています。
泉パークタウン中央交差点

泉パークタウン中央交差点(画面奥から手前が北四番丁大衡線)
(泉区明通一丁目、2009.5.23撮影)

野村

北四番丁大衡線沿線の水田と団地の見える風景
(泉区野村、2009.5.23撮影)
古内

北四番丁大衡線沿線の田園風景
(泉区古内、2009.5.23撮影)

 仙台郊外の住宅団地は穏やかな稜線を持ちながら、所々に小規模な流れが谷間を刻む丘陵地に造成されています。そのため、そうした谷間に向かって緩やかな傾斜を持っていることが多く、また団地と団地を移動する際はその谷間を下って上ることもまた多い特徴があります。北四番丁大衡線は、長命ヶ丘・加茂団地の間を抜け、ゆるやかに下って長命ヶ丘東交差点に行き着きます。ここは北環状線と呼ばれる県道37号仙台北環状線との交差点で、北環状線はまさに丘陵地の間に切れ込む谷筋を通過する路線です。環状線は谷筋を上りきると、川平、南中山、国見ヶ丘、吉成などの団地を縦貫しながら、アップダウンの激しい郊外住宅団地をを連絡し、東北道仙台宮城インターチェンジ方面へとつながっていきます。

 桜ヶ丘団地を超え、都市計画道路鶴ヶ谷中山線を水の森三丁目交差点で越えますと、比較的小規模な宅地開発地域と北山周辺の緑地帯とを橋梁とトンネルで通過する区間へと入ります。この区間は輪王寺参道の地下を貫通するため、輪王寺参道の林を伐採するなど大規模な工事が行われました。工事は概ね2008年から2012年にかけて行われ、北四番丁(国道48号)以北の東北大学病院東の区間の拡幅とともに地域の街並みを一変させました(この区間の様子は、拙稿#46 木町通を歩く 〜劇的な変化を遂げた道路〜に掲載しています)。2012年3月に北山トンネルを含む部分が供用開始され、泉パークタウンから東北大病院前の国道48号までが片側二車線の幹線道路により一本でつながりました。

長命ヶ丘

長命ヶ丘付近の北四番丁大衡線
(泉区長命ヶ丘東、2009.5.23撮影)
水の森三丁目

水の森三丁目交差点を南方向へ遠望
(青葉区桜ケ丘二丁目、2009.5.23撮影)
水の森三丁目

水の森三丁目から見た北四番丁大衡線
(青葉区水の森三丁目、2009.5.23撮影)
輪王寺

輪王寺参道
(青葉区北山一丁目、2009.5.23撮影)

 仙台市北部と中心部を結ぶ幹線道路として長らく完成が嘱望されていた北四番丁大衡線は、バス路線の再編等も行われて都市県内交通の利便性向上に大いに寄与するものと思われます。その一方で、仙台市は低成長時代を踏まえて費用対効果の少ない都市計画道路計画の廃止など大規模な見直しも進めているようです。また、政令指定都市への移行のため合併された旧泉市へのいわゆるバーターとして多くの開発が当該地域で行われる形となり、相対的に都市開発への資本投下が少ないと感じる旧市街地の市民の一部にはこの見直しに対する不満も少なくないと考えられます。人口減少時代を迎えて都市機能のコンパクト化と都市交通のバス・地下鉄等の公共交通への集約化を図るとする仙台市の都市計画の推移を、今後も注意深く見守ってまいりたいと思います。


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