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シリーズ・クローズアップ仙台

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#26 仙台卸商団地 〜東北有数の一大流通ゾーン〜


仙台市の東部、国道4号線仙台バイパスに接して、「仙台卸商団地」の広大な流通関連の敷地が展開しています。住居表示も「卸町(一〜五丁目)」で統一されていまして、ここから北東方向の製造業の集積する地区(苦竹・日の出町・扇町周辺)とあいまって、仙台における一大工業・流通ゾーンが形成されていることが見て取れます。今回は、これらの諸施設のうち、中核的かつ大規模な流通団地として東北地方でも有数の規模を持つ仙台卸商団地について概観してみます。

仙台において郊外地域に流通産業の拠点的な地区が形成される端緒となったのは、流通業の近代化と大規模化に伴い、過密化して地価が高騰する市街地内に事業所を立地させるメリットの急速な縮小でした。モータリゼーションに伴う幹線道路の渋滞も、効率的な流通を阻害する要因となり、郊外における大規模な流通団地の形成が要請されることとなったわけです。1964(昭和39)年に「仙台卸業団地建設委員会」が結成され、翌65年に仙台市や経済界の後押しも加わり、第一次の取得用地が買収されることとなりました。以後、仙台市の流通業務地区としての都市計画決定を受けて土地の買収、区画整理、道路網の整備などが進められ、1970(昭和45)年に、多業種の企業が集まる総合卸売団地として、「仙台卸商団地」は完成しました。団地の総面積は556,815平方メートル(およそ17万坪)にもなり、中小191の卸売業者が市街地などから集団移転しました。

仙台バイパス

国道4号線仙台バイパス
(若林区卸町五丁目、2005.4.9撮影)

仙台倉庫団地

仙台倉庫団地の景観
(若林区卸町五丁目、2005.4.9撮影)
トラック輸送センタ−

トラック輸送センタ−
(若林区卸町四丁目、2005.4.9撮影)


仙台中央卸売市場
(若林区卸町四丁目、2005.4.9撮影)

仙台卸商団地は、トラック輸送センタ−や倉庫団地、中央卸売市場などの関連した施設も設置されまして、集積のメリットを最大限に生かした地区づくりが進められました。事業所だけでなく、豊かな街路樹が植栽された街路や緑豊かな公園などが配置されて、流通団地特有の人工的な雰囲気を解消するような配慮もなされているようです。また、立地する事業所の参加する協同組合(協同組合仙台卸商センター)により、産業見本市会館(愛称:サンフェスタ)や共同配送センター、卸町会館・ホテル(厚生施設)、グリーンストア(スーパーマーケット)、共同給油所などが運営されていまして、進出した企業に対しさまざまな事業サービスを提供しているようです。同協同組合ホームページによりますと、現在の組合員数は279社にものぼるとのことです。

サンフェスタ

産業見本市会館“サンフェスタ”
(若林区卸町二丁目、2005.4.9撮影)

卸町会館前の街路

卸町会館前交差点から東方向
(若林区卸町二/三丁目、2005.4.9撮影)

グリーンストア

卸町グリーンストア
(若林区卸町一丁目、2005.4.9撮影)
高砂堀

卸商団地内、高砂堀
(若林区卸町三丁目、2005.4.9撮影)

2005年4月9日、宮城野原から木ノ下、若林区役所周辺を経て遠見塚古墳を概観し、仙台市街地へもどる帰路、卸町を歩きました。土曜日ということもあり団地内は通る車両も少なく、静かな雰囲気でしたが、少なくないトラックが出入していまして、休み無く機能する大規模流通団地の姿を目にすることができました。仙台中央卸売市場の南西角、卸町五丁目交差点に架けられた歩道橋は間もなく撤去される表示があったり、団地内の公園の除草などの管理が行き届いていなかったりと、団地が徐々に歩く人の目線から、走る車両の視線へとシフトしている印象をも受けました。長引く景気の低迷もあり、厳しい経営を迫られている企業が多いと思われますので、流通団地全体としていかに設備を充実しながら、一方において効率的な企業運営を行っていけるか、仙台卸商団地の今後にも注目していこうと思います。

最後に、卸商団地内を南西から東方向に貫く水路が目に止まりました。この水路は先に若林区役所界隈で見た「高砂堀」の下流部分であり、卸商団地をはじめとしたこの周辺の流通・製造業業務地区のほとんどがかつては広大な水田であったことを今に伝えていました。


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