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シリーズさいたま市の風景

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#6 新都の北郊 〜緑豊かな高燥の地〜

 2002年11月20日、シリーズさいたま市の風景のための最後のフィールドワークに出かけました。コースは、前回の着地であったJR指扇駅→JR宮原駅→大宮市街地→浦和市街地→JR浦和駅です。本稿では、指扇駅〜宮原駅までをまとめたいと思います。指扇駅前の道路を北へ進み、川越線の踏切を渡ります。県道さいたま鴻巣線に沿って小規模な商店街が形成されています。付近は住宅やマンションも多いですが、それなりに緑もあり、せせこましいながらも、圧迫感の少ない土地のように思われました。ほどなくして到達する国道16号線も、シェルターをかぶった高架の構造になっており、騒音や車の列などが遮断されて、このこともこの地域をあつかましい雰囲気から開放している一要素のように思われました。

 旧大宮市内には、ちょっとした街路にも愛称がつけられているようで、たとえば、指扇病院と国道の交差点北で県道と交差する東西の道(指扇支所の前をとおり、清河寺交差点に向かう道路)は、「扇通り」というニックネームで呼ばれていました。このときは、指扇地域の古社「秋葉神社」を目指していましたが、秋葉神社の方向に北東方向に折れる道も、「秋葉通り」という名前が付けられているようでした。

秋葉神社
秋葉神社(さいたま市中釘)
2002.11.20撮影

秋葉神社へと向かう道は、荒川から隔たった台地を、ごく浅い谷が刻む高燥の土地を進みました。太陽ヶ丘団地などもありますが、概して宅地化はゆるやかで、広々とした耕地と、ゆたかな森、屋敷林を伴った旧家とが連続する、まさにさいたま市を通じて感じてきた、この地域の原風景に近い景観でした。季節は秋。里の森も紅葉が進んでいて、見事な赤や黄色の森をバックに建つ家々、その前の畑に咲く菊の花たち。このような穏やかな景観の中に、秋葉神社の蒼林もありました。出雲大社のような神社の造りの前に切妻の建物が組み合わされたなかなかの結構の神社でした。無形文化財の舞もこの神社で行われているようで、付近の文化が垣間見られたような気がいたしました。

 秋葉神社の南には、零細規模の町工場が隣接してありました。また、穏やかな日和のこの日、家々のあちこちで煙が緩やかに立ち昇り、落ち葉たきの光景が目に浮かびました。こういったことが、もし都心や住宅地で行われていたとすれば、たちどころに騒音・悪臭などの環境問題に摩り替わってしまうのですが、こういった光景も情景として見えてしまうほど、おおらかな空気と、ゆるやかな景観とが、この地域を支配していました。この工場にしても、きっと昔からこの地域に立地していたに違いなく、良好な近隣関係のなかで存立しているのだろうな、と想像しました。

さいたま市高木
ナナカマドの畑、森を背負った集落
(さいたま市高木、2002.11.20撮影)


秋葉神社を後にして、高木、清河寺へと東へ進みます。その間の景観も、私にとっては魅力的な風景ばかりで彩られていました。一方で、指扇北小学校近くでは、やや広い土地が団地として開発されようとしている光景も見ました。私の手持ちの地図では「全糧連倉庫」となっている場所のようでした。高木と清河寺の境の湿地帯(上に書いた「浅い谷地」に当たる地形)を過ぎ、名刹清河寺へ。付近の地名にもなっているこの寺は、豊かな森や竹林を背後に背負い、茶の垣根、銀杏の木などが配され、付近を緩やかに見下ろす立地に鎮座していました。

清河寺の交差点で再び扇通りに出会い東へ進めば、そのままJR宮原駅西口に行き当たります。宮原駅に近づくにつれて概して住宅地やマンションなどが増え、大都市近隣のコミュニティを髣髴とさせる景観になっていきますが、あくまでベースは緑豊かな高燥の地であり、建物が密集することによる圧迫感や閉塞感といったイメージとはおよそ無縁な、明るい景観が続きます。中には、天を突くかと思えるほど巨大なケヤキの木を擁する民家もありました(後に調べたのですが、県の天然記念物に指定されているケヤキの木であるとのことでした)。やがて、その落ち着いた雰囲気のまま、JR宮原駅西口に到達。線路をまたぐ東西連絡歩道橋を渡り、商店が多い駅前通などの町並みが整った東口に出て、県道鴻巣桶川さいたま線を南に進みました。

清河寺
清河寺(2002.11.20撮影)

駅に至近であること、中山道に沿った地域で伝統的に開けた土地柄であること、幹線道路に近いことなどの諸要因が手伝ってのことか、周囲は中程度の密度を持った住宅地域の趣でした。高崎線の西側では随所に見られた緑地帯も、ここではかなり限定された分布となっていました。新幹線・ニューシャトルの下をくぐり、宮原地区土地区画整理事業地内へ。中では、暫定的に仮設の建物で業務をスタートさせる北区役所の建設が急ピッチで進められてました。この探訪では初めて区役所となる建物を見たのですが、付近はまだ開発の只中、周辺も旧来からの中密度の住宅地が続くばかりでした。

北区役所、建設中!
建設中だった北区役所
(2002.11.20撮影)





さいたま市の北のはずれは、広い土地と豊かな緑に包まれた景観に包まれる土地、一言に尽きます。この雰囲気を今後とも維持していって欲しいものです。

                                   


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