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りょうもうWalker

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#17 大間々の町並みと小平の里の風景 ~宿場町と長閑な山里を歩く~

 2018年11月3日、東武桐生線の北の起点である赤城駅より、みどり市大間々の諸地域を巡る散策に出発しました。大間々は渡良瀬川が山地から平地へとさしかかる場所に発達した、いわゆる谷口集落と呼ばれる町場です。国道122号沿いにまとまった市街地を形成する大間々の町並みは、有数の銅山として栄えた足尾へと続くことから銅(あかがね)街道と呼ばれた街道筋の宿場町として存立してきました。赤城駅はその大間々の町の南の外れに位置しています。まずはわたらせ渓谷鐵道の大間々駅方面へと歩を進め、関東菊花大会が開催されている「ながめ公園」へ向かいました。

赤城駅

東武鉄道・上毛電鉄 赤城駅
(みどり市大間々町大間々、2018.11.3撮影)
ながめ余興場

ながめ余興場
(みどり市大間々町大間々、2018.11.3撮影)
眺め公園から高津戸峡を望む

ながめ公園から高津戸峡を望む
(みどり市大間々町大間々、2018.11.3撮影)
ながめ公園・関東菊花大会の風景

ながめ公園・関東菊花大会の風景
(みどり市大間々町大間々、2018.11.3撮影)
神明宮

神明宮
(みどり市大間々町大間々、2018.11.3撮影)
はねたき橋

はねたき橋
(みどり市大間々町大間々、2018.11.3撮影)

 ながめ公園は、隣接する渡良瀬川の渓谷である「高津戸峡」への眺めがまさによいことからその名がつきました。1937(昭和12)年に完成したながめ余興場を中心に園地が広がり、菊人形や懸崖作り、盆栽に仕立てたものなど、カラフルかつ多彩な菊が園内を彩っていまして、秋本番の華やかさに溢れていました。園内からは奥深い渓谷を刻みながら関東平野へと流出していく姿を眺めることができました。ながめ公園からは高津戸峡方向へと下り、県道を渡ります。駐車場に隣接する大間々の鎮守である神明宮を参詣後、杉木立の中を歩いて、「はねたき橋」方向へと向かいます。「はね瀧」とは、渡辺崋山が1831(天保2)年にこの地を訪れて、「社の後、巌をとり木の瀑に下れば「はね瀧」という」などと記したことから、東寺~既に呼ばれていた地域的な峡谷の呼び名であったのでしょう。歩行者用の橋である「はねたき橋」を渡り、その橋の上から色づく高津戸峡を観賞しました。

 はねたき橋を渡り、つづら折りのカーブを登っていきますと、発電用として建設された高津戸ダムが見えてきます。渓谷の景観を保存するために、ダムは峡谷の上流端に建設されました。発電出力は年間約2,000万キロワット時で、一般家庭およそ5,500軒分に相当するのだそうです。ダムの対岸は住宅地となっていまして、河岸段丘が随所に発達した渡良瀬川の地形を確認することができます。その段丘崖下はダム湖となって、周辺の森の足許を水に浸していました。ここからは、渡良瀬川左岸の市道をひたすらに歩いて、渡良瀬川支流の小平川上流に向かって歩を進めていきます。対岸には国道や鉄道も走る、大間々の市街地が広がるのに対し、左岸側は概して低地が少なく、粗放的な土地利用になっています。浅川大橋のたもとを過ぎ、さらに山の中を歩いて、福岡中央小学校近くで県道に合流、小平の里呼ばれる山里へとさらにペースを上げていきます。たおやかな山並みの中に、水田や庚申塔、小さな祠などが点在する風景は、伝統的な山村における風景そのままの味わいを残していまして、秋の日射しを受けてさざなみのような優しさに満ちているように感じられました。付近には鍾乳洞もあって、里山と自然とにふれあえる公園施設として整備され、多くの人々が底を訪れていました。



高津戸ダムと対岸の市街地
(みどり市大間々町高津戸、2018.11.3撮影)
赤城山を望む

赤城山を望む
(みどり市大間々町高津戸、2018.11.3撮影)


薬師堂とカヤ
(みどり市大間々町浅原、2018.11.3撮影)
小平の里・嵯峨宮

小平の里・嵯峨宮
(みどり市大間々町小平、2018.11.3撮影)
小平の里の風景

小平の里の風景
(みどり市大間々町小平、2018.11.3撮影)
小平鍾乳洞

小平鍾乳洞
(みどり市大間々町小平、2018.11.3撮影)
浅原の百観音

浅原の百観音
(みどり市大間々町浅原、2018.11.3撮影)
小平川流域の水田風景

小平川流域の水田風景
(みどり市大間々町浅原、2018.11.3撮影)

 小平の里からは小平川の対岸に位置する浅原地区へと進み、地域の寄進者が大飢饉に際して掘らせたという浅原の百観音など、地域色に溢れた風景を探勝しました。小平川のつくる平坦地いっぱいに開墾された水田の風景はとても爽快で、日本の山村の原風景たる眺望を目の当たりにしました。行きに一瞥した浅原大橋を渡って元来た道を戻り、はねたき橋付近に到達してからは、渡良瀬川に沿って設けられた高津戸峡の遊歩道へと入りました。色づき始めた落葉樹が夕日を浴びて輝く様が、眼下の渓谷を洗う川の流れがつくる風光とからみあって、極上の秋の風景を完成させていました。ごつごつとした岩場を水が流れ下る風景はとても清爽で、周囲の山々の緑の上に天蓋のごとくある空の透明さと呼応していました。高津戸峡は「関東の耶馬溪」とも称されているのだそうです。

 高津戸峡の穏やかな散策を終えた後は、赤い高津戸橋を渡ってながめ公園入口交差点まで進み、宿場町として栄えた大間々の町を歩きました。灯籠やゆかりの古い神社や寺院が昔ながらの商店街に残る町並みは、この町が長い時代に渡ってその繁華を繋いできた証であるといます。大祭の幟を掲げた光栄寺の結構も実に伸びやかな佇まいです。町ごとに常夜燈が存在しているのは、かつて通りの中央に堀があり、それを照らすためであったようで、そうした事物の存在も、この町の賑わいを伝えているようです。町屋や土蔵、醸造元の建物などもあって、レトロな町並みをさらに豊かな景観へと導いていました。大間々は、明治以降は当時主力輸出品であった生糸の集散地として転換し、繁栄を維持していました。洋風建築が一部に認められることも、そうした史実を反映したものです。

高津戸峡

高津戸峡
(みどり市大間々町高津戸、2018.11.3撮影)
光栄寺

光栄寺
(みどり市大間々町大間々、2018.11.3撮影)
常夜燈

常夜燈
(みどり市大間々町大間々、2018.11.3撮影)
大間々の町並み

大間々の町並み
(みどり市大間々町大間々、2018.11.3撮影)
大間々博物館

大間々博物館
(みどり市大間々町大間々、2018.11.3撮影)
醸造元の建物

醸造元の建物
(みどり市大間々町大間々、2018.11.3撮影)
大間々駅

わたらせ渓谷鐵道・大間々駅
(みどり市大間々町大間々、2018.11.3撮影)
大間々駅構内

大間々駅構内
(みどり市大間々町大間々、2018.11.3撮影)

 大間々の多彩な町並みを歩いた後は、わたらせ渓谷鐵道の大間々駅へと向かい、大間々の散策を終えました。わたらせ渓谷鐵道は、1989(平成元)年3月に、JR足尾線を第三セクター化して誕生した路線です。足尾銅山からの輸送を目的として建設された路線は現在地域のローカル輸送をになう存在になっていますが、秋の紅葉の季節はトロッコ列車を走らせ人気となるなど、近年は観光路線として活路を見いだそうとしています。入線した列車も満員の状態で、渡良瀬川のつくる渓谷美を求め多くの観光客に利用されているようでした。谷口の町場と、郊外における山間の風景とを歩いた今回の大間々訪問は、藩政期から近代へ、時代の変化に対応しながら生きた、先達のたゆまぬ努力の結晶としての景観を改めて辿るものとなりました。。


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