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#14 足利市街地を歩く ~機業で一時代を築いた都市基盤~

 2017年1月15日、渡良瀬川の土手にほど近い東武伊勢崎線・足利市駅を出発しました。この日は典型的な冬型の気圧配置で、晴天ながらきわめて強い季節風に見舞われる1日でした。中橋で渡良瀬川の流れを渡り、本通りの市街地を東へ、足利学校に程近い観光の拠点「太平記館」へと向かいました。国道293号を挟んだ西側には中世に関東における最高学府として知られた足利学校の建物が復元されて、往時の佇まいを見せています。堀割に囲まれた茅葺の建物は、背景の山並みとも美しく寄り添っているように感じられて、穏やかな町並みを構成していました。

足利学校

足利学校
(足利市昌平町、2017.1.15撮影)
鑁阿寺門前

鑁阿寺門前の景観
(足利市大門通、2017.1.15撮影)


鑁阿寺周囲の堀
(足利市家富町、2017.1.15撮影)
鑁阿寺

鑁阿寺
(足利市家富町、2017.1.15撮影)
奥の院通り

奥の院通りの景観
(足利市家富町、2017.1.15撮影)
本城厳島神社

本城厳島神社(明石弁天)
(足利市本城二丁目、2017.1.15撮影)

 足利学校周辺の石畳の市街地景観は、小京都とも形容される温雅さに溢れていました。土蔵や古い町屋造の建物も混じる町中を進んでいきますと、足利氏の居館跡に建立された古刹・鑁阿寺へと導かれました。堀に架けられた瓦屋根付きの橋を渡り、慎ましやかな容貌の仁王門(楼門)をくぐりますと、歴史のある町を象徴してきた質実さに満ちた風景が広がっていました。境内は周囲を堀で囲まれていまして、鎌倉時代前後開創された武士の館を礎とする特性を今に承継しています。本堂は1299(正安元)年建立、応永14年から永享4年(1407 – 1432年)に大規模な改造を受けたという歴史を持ち、密教寺院における禅宗様仏堂の初期の例として、また関東地方における禅宗様の古例として、2013(平成25)年に国宝の指定を受けています。入母屋造の本堂はその中心に静かに佇んでいました。「大日様」として市民に親しまれるのびやかさに包まれていました。

 鑁阿寺の西門から境内を出て寺院の周囲をめぐる堀沿いに北へ進み、北門の門前へ至り、そこから北へ延びる石畳の街路を歩きました。街路樹によって穏やかに修景されたこの通りは、鑁阿寺の奥の院として崇敬された旧樺崎寺(現在は八幡宮が残る)への参詣道であったことから「奥の院通り」の名で親しまれているようでした。周辺には鑁阿寺に奉仕した支院が存在し、定期市も立ったことから「じけ(寺家)んち市」の場としても賑わいました。現在は鑁阿寺に隣接する閑静な住宅街となっていまして、古き良き町の姿をとどめていました。足利市街地は足尾山地の南端から流出する名草川などの小流がつくる小規模な低地に発達しました。その後背地は主に農地として利用されましたが、より多くの水を供給するために丘陵に沿って渡良瀬川上流から農業用水路(柳原用水)が建設されました。この用水路は南から北へと流れているので、「逆さ川」の通称で呼ばれています。豊かな緑に覆われた山裾をたどる用水沿いは、古刹も多く存在していまして、快い散策を楽しめるコースとなっています。逆さ川をさらに上流へ進み、市役所近くの市街地へと出てさらに歩きますと、織姫神社の下へとたどり着きます。石段を上った先には壮麗な社殿があって、眼下の町並みを見守っていました。境内からは渡良瀬川に寄り添うようにある足利の町並みを美しく眺望することができます。彼方には地元・太田市の金山も目の前で、県境を跨ぎ一体的な経済圏を形成する両毛の地域性も実感できます。

逆さ川沿いの景観

逆さ川沿いの景観
(足利市本城三丁目付近、2017.1.15撮影)
織姫神社前

織姫神社前の風景
(足利市西宮町、2017.1.15撮影)
織姫神社

織姫神社
(足利市巴町、2018.1.14撮影)
足利市街地俯瞰

織姫神社から足利市街地を俯瞰
(足利市巴町、2018.1.14撮影)
足利大通り

足利大通りの景観
(足利市通二丁目付近、2017.1.15撮影)
渡良瀬橋

渡良瀬橋
(足利市通四丁目、2017.1.15撮影)

 近代以降、足利は地場産業として興隆していた繊維産業が飛躍的な成長を遂げて、日本有数の銘仙の産地として急速に都市基盤を整備させていきました。明治期の地勢図を確認しますと、足利の市街地は今日の広がりと寸分違わない密度でもって描かれていまして、往時の繁栄ぶりが偲ばれます。市街地を東西に貫く足利大通りは「旧50号」として親しまれていまして、中小の建物が軒を連ねる都市景観が続いています。歌謡曲「渡良瀬橋」の舞台で、地元では「鉄橋」と呼ぶ渡良瀬橋を渡り、浅草へ直通する特急列車の発着する東武足利市駅へと至って、足利市街地の彷徨を終えました。
足利市街地は豊かな産業と歴史とをほどよく織り交ぜた、両毛地域を代表するのびやかな町並みが今に連綿と受け継がれているまちであるといえると思います。


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