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尾道ビューティーズ
〜「まち」と「しま」の光芒〜

2014年5月5日、初夏の広島県尾道を訪ねました。歴史ある寺社と昔ながらの街並みが交錯する市街地散策から、川のような尾道水道を越えてしまなみ海道へ、
美しさに満ち溢れた「まち」と「しま」の輝きにたくさん出会える行程となりました。


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しまなみ海道サイクリング 〜彩りあふれる初夏の島々〜

 2014年5月5日、朝から正午過ぎまで続けた尾道市街地散策の後は、尾道駅近くのサイクリングターミナルで自転車を借りて、尾道水道の対岸へ続く「しまなみ海道」のサイクリングへと向かいました。対岸の向島へはフェリーを利用します。まるで川のような尾道水道の幅は200から300メートルほどしかありません。わずか5分ほどの航行で横断してしまいます。尾道と四国の今治とを島伝いに進む「しまなみ海道」は、サイクリングコースとしても整備されていまして、サイクリストにとっても人気のエリアです。コースとなる道路には青色のペインティングがなされていまして、迷うことなく走れるよう配慮されています。向島ドックのクレーンの群れを仰ぎながら向島に上陸し、隣の因島を目指しました。

向島行き渡船乗り場

向島行き渡船乗り場
(尾道市東御所町、2014.5.5撮影)

向島のドックを望む

向島のドックを望む
(尾道市、2014.5.5撮影)

向島の景観

向島町の景観
(尾道市向島町、2014.5.5撮影)


向島大橋の先に因島大橋、因島を望む
(尾道市向島町、2014.5.5撮影)
津部田常夜燈

津部田(つぶた)常夜燈
(尾道市向島町、2014.5.5撮影)
因島大橋を望む

因島大橋を望む
(尾道市向島町、2014.5.5撮影)

 しまなみ海道が経由する6つの島のうち、尾道の対岸から向島、因島、生口島までが広島県で、残りの3島(大三島、伯方島、大島)は愛媛県です。平成の大合併により広島県の3島は尾道市の一部となりました(一方の愛媛県側は今治市域となっています)。因島には生口島の一部を含めて因島市が成立していましたが、市をも巻き込んだ合併に、町としての尾道の影響力の大きさを感じます。船着場周辺に広がる向島の市街地を抜けて、丘陵性の島の西岸を進んできます。右手には向島に寄り添うように岩子島(いわしじま)が浮かんでいます。御幸瀬戸と呼ばれる細い海峡には赤い向島大橋が架けられていまして、向島と因島をつなぐ因島大橋と重なります。2つの橋の向こうには因島の島影があって、美しい「しまなみ」の遠景を構成していました。

 海沿いをさらに進んで、因島へと渡る因島大橋を目指します。鏡のようになめらかな海面の先には山脈のようなスカイラインを呈する因島が横たわり、そこへ向かって瀟洒な因島大橋が灰色の空に溶け込むようにして渡されていました。橋の下は主要航路となっているために橋はかなり高い位置にあります。橋の下をいったん通過して自転車と歩行者が利用する専用道路に入り、斜面をジグザグに登ってようやく橋のたもとに到着、自動車道路の下に並行する歩行者自転車道へと進みます。鉄骨の間からは穏やかな海が眼下に見えまして、山がちな因島も間近に迫力ある容貌をさらしています。なお、因島大橋は二輪車で通過する場合通行料金が必要で、設置されている料金箱に50円を入れる仕組みになっています。約1.3キロメートルの橋を走り切りますと、今度は専用道路を下って橋の袂の道路へと導かれました。

向島の海岸風景

向島の海岸風景
(尾道市向島町立花、2014.5.5撮影)

因島大橋

因島大橋・歩行者自転車道
(因島大橋上、2014.5.5撮影)

因島大橋から望む因島と布刈瀬戸

因島大橋から望む因島と布刈瀬戸
(因島大橋上、2014.5.5撮影)
除虫菊越しに望む因島大橋

除虫菊越しに望む因島大橋
(尾道市因島大浜町、2014.5.5撮影)
因島鉄工団地・細島・三原方面

因島鉄工団地のクレーン群と細島、三原方面を望む
(尾道市因島重井町、2014.5.5撮影)


岩子島越しに尾道市街方面を望む
(尾道市因島重井町、2014.5.5撮影)

 因島は前述したとおり、かつては瀬戸内海に浮かぶ島の中では淡路島を除けば唯一市制をしいていました。因島を支えてきた産業は造船です。高度経済成長期には好景気で沸き、最盛期には生口島の一部を含む旧因島市域で約4万2千人の人口を擁しました。瀬戸内海で活躍した村上水軍をはじめ、古来から受け継がれてきた航行に関する経験や技術に裏打ちされた造船業は今日でも島の基幹産業となっています。また、瀬戸内の温暖な気候を生かした柑橘類の栽培も伝統的な産業の一つです。道路わきにはあちこちにミカン畑があって、まもなく花期を迎え榕としている様子を確認できました。さらに、因島の初夏を象徴する花として除虫菊が挙げられます。蚊取り線香や殺虫剤の原料となる除虫菊はかつて因島で多く栽培され、その白い花が一面に咲く風景は島の初夏の風物詩ともなっていました。現在では農業としての作付は行われておらず、専ら観光用に植えられて、変わらず因島の初夏を彩っています。因島大橋の西詰から再び山の上へ続く坂道を上って、橋を見下ろす場所につくられた除虫菊の畑へと向かいました。向島と因島とを隔てる布刈瀬戸に架かる橋は目の前に咲く除虫菊の花の色そのままのあわい白さを示していまして、穏やかな瀬戸内の風景に寄り添うような佇まいを見せていました。

 半色(はしたいろ)の涼やかな花を咲かせる桐の花に見送られながら、高台の道を進みます。北西に浮かぶ細島や小細島、岩子島を介し尾道から三原にかけての本土が彼方に広がって、のびやかな瀬戸内の風景が目の前に広がります。直下には鉄工団地に林立するドックのクレーンも並んで、因島を象徴する事物の存在しています。はるか向こうには三原の市街地と思われる街並みも見えていました。も山の中腹を縫うように進む道路を辿って到達した因島フラワーセンターは、見ごろを迎えた除虫菊の花で埋め尽くされていました。朝から曇りベースで推移していた天候もこの頃までには薄日が差して雲間から青空も垣間見られるようになり、淡く射し込む日差しに透かして見る除虫菊の花弁は瀬戸内の海や山のきらめきそのものであるように思われました。

因島フラワーセンターの除虫菊

因島フラワーセンターの除虫菊
(尾道市因島重井町、2014.5.5撮影)

因島フラワーセンターの除虫菊

初夏の青空と除虫菊
(尾道市因島重井町、2014.5.5撮影)

生口橋を望む

生口橋を望む
(尾道市因島中庄町、2014.5.5撮影)
因島、港の風景

因島、港の風景
(尾道市因島土生町、2014.5.5撮影)
土生港

土生港旅客ターミナル
(尾道市因島土生町、2014.5.5撮影)
重井東港から望む夕日

重井東港から望む夕日
(尾道市因島重井町、2014.5.5撮影)

 フラワーセンターを後にして、因島最大の市街地が形成される土生港周辺まで足を延ばしました。隣の生口島とを結ぶ生口橋の下をくぐり、土生の市街地へ。因島最大の町場であり、本土と四国、周辺の島々を結ぶ船便が多く発着する市街地は、古くより海上交通の結節点として存立し、近代以降の造船の島を支えた島の中心地としての凄みを感じさせました。新しいフェリーターミナルの建物と、歴史を感じさせる雁木のある港湾風景に、瀬戸内海を介してダイナミックに展開された、古来から現在までの航海史を重ねました。対岸の生名島は愛媛県域となります。夜空を埋め尽くす無数の星々のように、本州と四国、九州の間を充填する海に散りばめられた島々が織りなす風土と歴史に思いを馳せながら、現在の瀬戸内の海と島が作り出す初夏の情景を体感しました。

 土生市街地まで到達した後は、元来た道を取って返して、島北部の重井東港より船便で尾道港へ戻り、尾道市街地としまなみ海道のフィールドワークを終えました。この日の夜出発する高速バスで帰路へ就きましたが、バスに乗車する前に駅前から眺望した尾道水道は、向島のドック施設がライトアップされて、昼間とはまた違った表情を見せていました。

尾道水道夜景

尾道水道夜景・ドックのライトアップ
(尾道市東御所町、2014.5.5撮影)
尾道水道夜景

尾道水道夜景
(尾道市東御所町、2014.5.5撮影)


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