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神戸メモリーズ・アンド・メロディーズ

「有馬温泉編」

VI.有馬温泉から六甲を越えて市街地へ

(13)北野からメリケンパークへ 〜港と山並みの結晶〜

 一面の銀世界、そして降り続く雪の中の六甲山中をバスで移動し、六甲ケーブルの六甲山上駅へ。ケーブルカーで山麓へと移動しました。高度を下げるにつれて積雪はみるみるうちになくなっていき、雪も止んでいきました。日本海側からの寒気の吹き出しの強まりがやや弱まった影響もあるとはいえ、山地の南北でこれほどまでに表情が変わることは、六甲山地の峻険さを改めて実感させました。六甲ケーブル下駅からはバスで阪急六甲駅へと進み、三宮へ向かいます。神戸市内最大のターミナルである三宮駅(会社により、神戸三宮駅、三ノ宮駅の表記が併存)周辺は、商業系・事業系のビルやホテル、バスターミナルが集積して、活気のある街並みが形成されています。



北野町の景観
(中央区北野町二丁目、2019.2.11撮影)
北野坂から三宮を望む

北野坂から三宮を望む
(中央区北野町二丁目、2019.2.11撮影)
北野天満神社境内から風見鶏の館を望む

北野天満神社境内から風見鶏の館を望む
(中央区北野町三丁目、2019.2.11撮影)
北野天満神社

北野天満神社
(中央区北野町三丁目、2019.2.11撮影)
異人館シュウエケ邸

異人館シュウエケ邸
(中央区山本通三丁目、2019.2.11撮影)
生田神社

生田神社
(中央区下山手通一丁目、2019.2.11撮影)

 三ノ宮駅を北へ出て、繁華な街並みを抜ける北野坂を歩きます。生田新道や山手幹線といった、東西方向の大通りを越えて、北野坂は周囲に多くの飲食店や娯楽施設などを伴いながら、六甲山麓へとまっすぐに伸びています。正面には霧のような雲がかかった山並みが間近に見えていまして、神戸の山手らしい風景が広がります。三ノ宮から離れるにつれて繁華街としての色彩はだんだんと薄れてきて、マンションや戸建て住宅の中に洋館が点在する、異人館街の北野町らしい景観へと移り変わっていきます。街路樹や歩道のプランターの花も美しく、六甲山地の緑と一体となった、穏やかな住宅地として修景されています。北野通りに行き着きますと、周囲には洋館がさらに増えまして、開港場として外国人が多く移住した地域の歴史を感じさせます。振り返りますと、緩やかな坂道の向こう、並木のラインの先に三宮の市街地が美しく見通せました。

 まずは北野通りを東へ歩き、プラトン装飾美術館(イタリア館)横の坂道を上り、住宅街にある洋館のたたずまいの中を歩きます。山手八番館やうろこの家などがある一角を西へ入ってそれらを概観しながら、北野天満神社へ。境内の梅はこれから盛りを向かるといった感じで、昨日来の雨にやわらかく濡れて花をほころばせていました。神社は北野町の北の一番高い場所にあって、境内からは隣接する風見鶏の館をはじめ、神戸港へ向かう街並みを一望のもとにすることができます。明治期以降、港町として急速に近代化が進んできた神戸の街も、その変化の前夜、半世紀の後期頃までは六甲山麓の豊富な水が利用できる穏やかな農村景観が広がる地域も多くありました。北野町もそうした変遷を経験した地区の一つです。北野通りを西へしばらく進み、ハンター坂、異人館通り、そして山本通三丁目交差点からはトアロードへと歩きながら、そうした地域の今を探勝しました。

三宮センター街

三宮センター街
(中央区三宮町二丁目、2019.2.11撮影)
いくたロードと生田神社鳥居

いくたロードと生田神社鳥居
(中央区三宮町一丁目、2019.2.11撮影)
三宮神社

三宮神社
(中央区三宮町二丁目、2019.2.11撮影)
大丸神戸店

大丸神戸店
(中央区明石町、2019.2.11撮影)
元町商店街

神戸元町商店街
(中央区元町通一丁目、2019.2.11撮影)
南京町

南京町広場
(中央区元町通一丁目、2019.2.11撮影)

 「いくたさん」と呼ばれ、神戸においてもっとも古いゆかりを持つ神社の一つである生田神社へと進みます。生田神社は、周囲が高度に都市化した中にあって閑静な社叢「生田の森」を残しています。中世初期には源平合戦の古戦場ともなった歴史があり、境内には「箙(えびら)の梅」などもあって、そうした過去を今に伝えています。鳥居前から続く道路は「いくたロード」と呼ばれ、三ノ宮駅周辺の繁華街の一角を占めています。JRの高架下を含めておびただしい数の飲食店や娯楽施設、商店などによって埋め尽くされていまして、人通りの絶えない活気のあるエリアです。南にはこちらも歩行者の絶えない三宮センター街が隣接しています。アーケードのその喧騒を目にしながらさらにいくたロードを歩きますと、三宮中央通りに面して生田神社の鳥居が立ちます。通りの南側の整然とした区画のエリアは旧居留地です。近代から現代にかけてのビル群が立ち並ぶ中にあって、その朱色の鳥居はこの町が中世から今日にかけて都市として歩みを続けてきたことを象徴しているように感じられます。

 三宮中央通りを西へ、ビル群の中に三宮の地名の由来である三宮神社の前を進んで、大丸の大きな建物を眺めつつ、鯉川筋の南北のとおりを横断しますと、元町周辺のエリアへと街並みが連続します。元町のアーケード街の南には中華街である南京町がその独特な景観を見せていました。この月の上旬から続いていた中国の春節の長期休暇最後の1日と重なり、南京町の中も芋を洗うような人出でした。三宮から元町、南京町と、現代の神戸を象徴する賑やかな地区を越えた先には、港町・神戸を代表する場所の一つともなっているメリケンパークがあります。かつてのメリケン波止場と中突堤の間の海を埋め立てて造成された公園で、ポートタワーをはじめとした建造物が立つ、港町としての神戸を実感できる風景が続いています。海岸に沿って高架が続く阪神高速の下をくぐり、阪神淡路大震災の爪痕を保存した「神戸港震災メモリアルパーク」の遺構を確認し、中突堤に立つポートタワーのたもとを経て、さらに西のハーバーランドの商業施設のある一角まで歩を進めました。沿岸部のクレーンが立ち並ぶ光景から、メリケンパーク周辺の建物越しに眺める六甲の山並みと神戸の市街地が重なる風景まで、都市としての神戸の魅力が凝縮された、多様な景観を堪能することができました。

神戸港震災メモリアルパークと阪神高速

神戸港震災メモリアルパークと阪神高速
(中央区波止場町、2019.2.11撮影)
神戸ポートタワー

神戸ポートタワーを望む
(中央区東川崎町一丁目、2019.2.11撮影)
クレーンの立ち並ぶ風景

クレーンの立ち並ぶ風景
(中央区東川崎町一丁目、2019.2.11撮影)
ポートタワーからハーバーランドを望む

ポートタワーからハーバーランドを望む
(中央区波止場町、2019.2.11撮影)
ポートタワーからポートアイランドを望む

ポートタワーからポートアイランドを望む
(中央区波止場町、2019.2.11撮影)
神戸の夜景

六甲ケーブル・六甲山上駅近くから見た夜景
(灘区六甲山町、2019.7.13撮影)

 新神戸駅から乗車することにしていた新幹線の時刻を確認しながら、残りの時間はポートタワーの展望台に上り、改めて神戸の街並みを俯瞰しました。この日は終始雲の多い天候で、六甲の山並みも曇天の下のものとなりましたが、その山容が作り出す風光に彩られるように、都市として成長した今日の神戸の都市景観はどこまでもまばゆく、目に映りました。この2月の訪問では見ることのできなかった夜景については、5か月後の京都訪問の合間を縫って六甲ケーブルで山上に上り、確認する機会を得ました。この町が歩んだ極上の時間を表現するかのような光の瞬きは、とても明るく、穏やかな風貌に満ち溢れていました。


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