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関東の諸都市・地域を歩く


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#78 大山・阿夫利神社を目指す 〜山岳信仰の山並み〜 

 2013年2月10日、神奈川県伊勢原市の北西端に位置する大山(おおやま)の山懐に鎮座する大山阿夫利(あふり)神社を訪ねました。大山は、神奈川県の北西部一帯に広がる丹沢山地の東端に位置する秀麗な山です。関東平野のに西端の独立峰として、広い範囲からその美しい山容を望むことができます。大山は別名「あふり山」と呼ばれます。「あふり」とは、「雨降り」のことで、常に山から霧や雲が沸いて雨を降らすことからの起こりであるとされているようです。そうした背景から古来より大山は雨乞いをはじめとした山岳信仰の対象となり、中世には多くの武将から崇敬を受けたほか、江戸中期以降はいわゆる「大山講」の勃興により、多くの人々が「大山詣り」を行ってきたことでも知られます。大山阿夫利神社は、山麓に下社が、山頂に本社と奥社がそれぞれ鎮座しています。

伊勢原駅前

小田急伊勢原駅前の景観
(伊勢原市伊勢原一丁目、2013.2.10撮影)
大山ケーブルバス停付近

大山ケーブルバス停付近
(伊勢原市大山、2013.2.10撮影)


こま参道の景観
(伊勢原市大山、2013.2.10撮影)
大山ケーブル

大山ケーブル・アップで撮影
(伊勢原市大山、2013.2.10撮影)
阿夫利神社駅付近

大山ケーブル・阿夫利神社駅付近
(伊勢原市大山、2013.2.10撮影)
大山阿夫利神社下社

大山阿夫利神社下社
(伊勢原市大山、2013.2.10撮影)

 小田急線伊勢原駅は、大都市圏郊外の典型的な小商業中心といった格好の駅で、周辺にはスーパーマーケットや金融機関が立地しています。北口には大山阿夫利神社の鳥居があって、大山への玄関口としての風情も感じることができます。大山ケーブル駅行きのバスに乗車し、大山の山麓へ向かいます。大山へ向かう谷筋には、古来からの参詣地であることもあり、現在でも多くの宿坊が存在し、門前町が形成されています。

 終点のバス停で下車し、大山阿夫利神社の下社まではケーブルカーが連絡していて、そのケーブル駅までは「こま参道」と呼ばれる土産店街が石段に沿って続きます。大山こまは郷土玩具として伝統のある品で、大山信仰と関わりながら発達してきたものであるようです。山肌に寄り添うように坂をゆったりと上るケーブルカーで10分足らず、大山阿夫利神社下社へ。ケーブル駅を下に迂回するように境内の正面に出て石段を登りますと、大山を背景に下社の壮麗な拝殿が目に入ります。数日前関東平野を中心に降った雨は、大山山頂では雪となっていたようで、山は雪化粧をしていました。参拝を終え、拝殿の左手にある登拝口から続く長い石段を辿って、大山山頂の本殿を目指します。

大山登拝口

大山登拝口
(伊勢原市大山、2013.2.10撮影)
登拝口近くの石段

登拝口近くの石段
(伊勢原市大山、2013.2.10撮影)
「丁目」を示す石碑

「丁目」を示す石碑
(伊勢原市大山、2013.2.10撮影)
千本杉

六丁目・大坂 千本杉
(伊勢原市大山、2013.2.10撮影)
夫婦杉

八丁目・夫婦杉(右)
(伊勢原市大山、2013.2.10撮影)
ぼたん岩

十四丁目付近・ぼたん岩が転がる参道
(伊勢原市大山、2013.2.10撮影)
天狗の鼻突き岩

十五丁目・天狗の鼻突き岩
(伊勢原市大山、2013.2.10撮影)
十六丁目

十六丁目・追分の碑
(伊勢原市/秦野市、2013.2.10撮影)

 石段を登り切ると山道となり、杉木立が深閑とした空気を漂わせる中、「本坂」と呼ばれる「参道」を進みます。大山の標高は1,252メートルです。大山阿夫利神社下社の標高が696メートルなので、およそ560メートルほどの標高差を登っていくことになります。山道は大きな岩石が転がっている場所があったり、勾配が全体的にきつめであったりと、山頂への道筋はまさに登山としての様相です。参道の傍らには、「○○(数字)丁目」と刻まれた石碑があって、歩を進めるたびにこの数字が大きくなっていきます。一般的な山岳で見られ、標高を10等分した場合の現在位置を示す「○合目」とは異なり、大山の「丁目」は10を過ぎてもどんどん数字は大きくなって、山頂は28丁目となっています。これらはいわば数字の順に進んでいくという道標のようなものであり、険しい山行を少しでも楽しく、達成感を感じてもらえるように配慮されたものなのではないかとも考えました。六丁目の石碑には「大坂 千本杉」と刻まれ、八丁目には「夫婦杉」と呼ばれる大杉があります。

 十二丁目辺りから、麓から仰ぎ見た山肌にあった雪が少しずつ足元に現れ始めました。十四丁目辺りでは「ぼたん(牡丹)岩」と呼ばれる球状の岩が転がる一帯を通過していきます。一見して何の変哲もない路傍の岩なのですが、風雅な名称を与えることにより、神の山の頂に向かって参道を進んでいるという高揚感を与えるようなものであるのかもしれません。山道を覆うような木々の隙間からは初春の青空が時々垣間見られまして、疲れをいくばくか癒してくれました。十五丁目には「天狗の鼻突き岩」。小さな穴が開くその岩は、天狗がその大きな鼻で突いて穴をあけたという伝説があるようです。秦野市蓑毛からの登山道を分ける十六丁目は、伊勢原市と秦野市の市境となっている尾根上にあって、ここからはその尾根筋を辿って山頂へ向かうことになります。下社から登り始めて約70分が経過していました。

雪で凍結する参道

十七丁目付近・雪で凍結する参道
(伊勢原市/秦野市、2013.2.10撮影)
富士見台

二十丁目・富士見台から望む富士山
(伊勢原市/秦野市、2013.2.10撮影)
ヤビツ分岐

二十五丁目・ヤビツ分岐付近
(伊勢原市/秦野市、2013.2.10撮影)
大山山頂付近の鳥居

大山山頂付近・鳥居
(伊勢原市大山、2013.2.10撮影)
本社

大山阿夫利神社・本社
(伊勢原市大山、2013.2.10撮影)
奥社

大山阿夫利神社・奥社
(伊勢原市大山、2013.2.10撮影)
大山山頂

大山山頂
(伊勢原市大山、2013.2.10撮影)
大山からの俯瞰風景

大山山頂から江の島方向を望む
(伊勢原市大山、2013.2.10撮影)

 十六丁目からは次第に道筋の雪の量が増え始めて、標高が高いことを示していました。約25分で、富士山への眺望が美しい富士見台へ。二十丁目にあたる当地からは、雲間にうっすらと、雪を頂いた富士山を見通すことができました。足元に気を使いながら、雪の覆われた山道を進むことおよそ30分、ついに山頂にある大山阿夫利神社本社の鳥居が見えてきました。本社と奥社にお参りしてから、関東平野を一望する眺望を楽しみました。この日は晴天ながらもややかすみがかっていたため、相模湾に突き出した真鶴半島や江の島などはぼんやりとしか望むことができませんでしたが、雄大な関東平野の広がりとそれを取り囲む丘陵地の様子を存分に眺めることができました。

 帰路は「雷ノ峰尾根」と呼ばれるルートを進み、見晴台と称される眺望スポットを経て、二重滝前を通過して大山阿夫利神社下社近くのケーブル駅に戻り下山しました。こちらのルートは雪量が多くて肝を冷やしましたが、無事に駅まで到達することができました。まだまだ寒い2月の訪問でしたが、道すがらには蝋梅や山茶花もあって、間近に迫った春を感じさせました。

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