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関東の諸都市・地域を歩く


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#154 たまプラーザ駅周辺の街並み ~車道と独立する歩行者道路の多い坂の町~
 
 2018年12月15日、年の瀬が迫ったこの日、横浜市郊外における商業中心である東急田園都市線・たまプラーザ駅を訪れました。2006(平成18)年度より着工した再開発事業により、同駅の駅舎は「たまプラーザテラス」と呼ばれる複合商業施設へと変貌し、周辺における大規模な商業集積もあいまって、密度の高い繁華街が駅を中心に形成されていました。北口の飲食店が多い「たまプラーザ中央商店街」を抜けて「美しが丘公園」へと到達、その公園の名前にもなっている、付近一帯の住宅地を散策してみることとしました。

東急百貨店

東急百貨店たまプラーザ店
(横浜市青葉区美しが丘一丁目、2018.12.15撮影)
たまプラーザ駅北口

たまプラーザ駅北口の風景
(横浜市青葉区美しが丘二丁目、2018.12.15撮影)
たまプラーザ中央商店街

たまプラーザ中央商店街
(横浜市青葉区美しが丘二丁目、2018.12.15撮影)
美しが丘公園

美しが丘公園
(横浜市青葉区美しが丘二丁目、2018.12.15撮影)
歩行者専用橋

幹線道路をまたぐ歩行者専用橋
(横浜市青葉区美しが丘二丁目、2018.12.15撮影)
歩行者道路

歩行者道路の風景
(横浜市青葉区美しが丘二丁目、2018.12.15撮影)

 美しが丘の町名で呼ばれる住宅エリアは、東急電鉄が先導して、田園都市線沿線を大規模開発した「多摩田園都市」の一角を占めます。地形的には早渕川の上流部が形成した南に開いた細長い谷地とその周辺の丘陵地が宅地化されていまして、地域内は戸建ての住宅が基本となるものの、中層のアパートが立ち並ぶ団地や社宅によって占められる街区もあって、多様な家族構成の世帯に対応しています。美しが丘公園は団地の中心を貫通する幹線道路が交差する場所に位置していまして、団地内のどのエリアからもこのメインストリートに車両でアクセスしやすいように配慮されています。そして、この住宅地の街路構造で特筆されることは、クルドサックと呼ばれる袋小路の先端がロータリー上になったものや歩道橋、広幅員の歩行者専用道路といったインフラを駆使して、極力歩行者が車道上を横断することなくたまプラーザ駅前まで到達できるよう配慮されていることです。

 美しが丘公園から公園北側の幹線道路を西へ進み、美しが丘小学校の西に接する歩行者通路に入ります。丘陵を上る形となるため随所が階段となっています。階段を上った先には幹線道路をまたぐ歩行者専用路がありまして、このルートをたどりますとたまプラーザ駅へとアクセスできるようになってるわけです。歩行者通路はカラフルなタイルで路面が装飾されていました。これは地域内を一周するウォーキングコースを示す仕掛けになっているようで、随所にワンポイント的にタイルが設置されている場所をたどっていけば、そのコースをなぞることができるようになっているもののようでした。団地の北側を周回する道路のすぐ北には川崎市との市境が迫っていまして、ここが横浜市でも最も北に位置する場所であることを示していました。この地域は戸建ての家並が主役となっていることもあって、周囲より高所を通過する道路からは、横浜市郊外エリアに展開するベッドタウンの風景を一望することができました。彼方に望む山並みは丹沢山系で、その南には大山と思しきピークも確認できます。うっすらとではありましたが、富士山の頂も視認できました。

美しが丘の家並み

美しが丘の家並み
(横浜市青葉区美しが丘二丁目、2018.12.15撮影)
団地を外周する幹線道路

団地を外周する幹線道路
(横浜市青葉区美しが丘二丁目、2018.12.15撮影)
歩行者道路

住宅地内を進む歩行者道路
(横浜市青葉区美しが丘二丁目、2018.12.15撮影)
幹線道路をまたぐ跨道橋

幹線道路をまたぐ跨道橋
(横浜市青葉区美しが丘二丁目、2018.12.15撮影)
庭木が整えられた街並み

庭木が美しく整えられた街並み
(横浜市青葉区美しが丘三丁目、2018.12.15撮影)
クルドサックのある風景

クルドサックのある風景
(横浜市青葉区美しが丘三丁目、2018.12.15撮影)

 美しが丘二丁目の、傾斜を石段で降りる歩道や、クルドサックを中心に同心円状に車道が取り巻くユニークな街路を縫うように進んでいくウォーキングコースを歩きながら、美しが丘の街並みを散策しました。住宅地内を通る規模の大きい車道のほとんどにはゆるやかなスロープの歩行者用の跨道橋が設置されていまして、車道との分離やバリアフリーにも配慮した構成となっていたのも印象的です。全体的に生け垣や庭木などを美しく整えている住宅も多くて、散歩していても実に快い気持ちになる街並みであると感じました。そうした良質な景観を維持するという、地域的な配慮のようなものがあるいは存在しているのかもしれないなと思い至りました。美しが丘第六公園に接する平津三差路からは幹線道路の南側へと横断して、たまプラーザ駅方面へと戻ります。

 こちらの街区は北側に向かってゆるやかに下る斜面を宅地化しています。美しが丘第三公園の前を通過しながら、住宅地の間を穏やかにつながっていく歩行者道路を快適に進みました。このルート上も、他のエリアと同様に、主要幹線となっている車道は跨道橋で越えているため、自動車交通と交差することは基本的にほとんどありません。歩行者道路はほどなくしてたまプラーザ団地の建物群が立ち並ぶエリアへと差し掛かりました。歩道の両側は樹高の高い街路樹が植栽されていまして、団地との間の緩衝的なゾーンとして配慮されていることも好感が持てます。現代のライフスタイルに合わせて自家用車利用の利便性も確保しつつ、歩行者の安全に最大限確保する精神が住宅地域全体で一貫しているようすを存分に確認することができました。

美しが丘第六公園

美しが丘第六公園
(横浜市青葉区美しが丘三丁目、2018.12.15撮影)
美しが丘第三公園

美しが丘第三公園
(横浜市青葉区美しが丘三丁目、2018.12.15撮影)
歩行者用通路

道路を歩行者用通路がまたぐ
(横浜市青葉区美しが丘三丁目、2018.12.15撮影)
美しが丘眺望

跨道橋上より美しが丘をと眺望
(横浜市青葉区美しが丘三丁目、2018.12.15撮影)
たまプラーザ団地内の風景

たまプラーザ団地を進む散策路
(横浜市青葉区美しが丘一丁目、2018.12.15撮影)
たまプラーザ駅

たまプラーザ駅
(横浜市青葉区美しが丘一丁目、2018.12.15撮影)

 歩行者道路は駅前の東急百貨店の2階部分に接続し、店舗内を介してたまプラーザ駅北口へと進んでいくことができます。クリスマスを間近に控え、駅前の商店は多くの人々で賑わっていました。首都圏郊外における宅地開発は、その時期における時勢やニーズなどを柔軟に取り入れながら、バラエティに富んだ都市計画を生み出してきた現代史のリアルな有様を、たまプラーザ駅周辺のこの地域は表現していました。


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