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関東の諸都市・地域を歩く


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#129 神奈川県寒川町を歩く ~相模国一之宮の鎮座する町~

 2017年5月6日、前夜に倉敷を出発した夜行バスでバスタ新宿に到着した私は、小田急線で海老名駅へ移動し、JR相模線に乗り換えて寒川駅へとやってきました。神奈川県中部の主要都市に周囲を囲まれる寒川町の人口は約4万8千人で、関東地方では第一位、全国でも台三位の人口を抱える町です(執筆時現在)。駅北口のロータリー先を東西に通過する町道を西へ進んで、町歩きをスタートさせました。

寒川駅

JR寒川駅
(寒川町岡田一丁目、2017.5.6撮影)
寒川駅近くの景観

寒川駅近くの景観
(寒川町岡田一丁目、2017.5.6撮影)
寒川神社参道

寒川神社参道
(寒川町宮山、2017.5.6撮影)
寒川神社二の鳥居

寒川神社二の鳥居
(寒川町宮山、2017.5.6撮影)

 図書館や町役場などが立地する、整然とした町並みを進みますと、寒川郵便局の西に、南北に連なるこんもりとした林が目に留まりました。片側一方通行の道の中央に細長く続くその林は、落葉樹と照葉樹が穏やかに混交する、参道の杜でした。隣接する県営水道の施設主片の公園を一瞥しながら、その参道を北へと歩きました。参道の木々は道路を覆うように繁茂していまして、歴史のある古社の雰囲気をいっそう際立たせていました。参道は巨大な二ノ鳥居を挟んでさらに続いて、相模国一之宮である寒川神社の鳥居前へと至りました。近傍には西善院が佇みます。寒川神社の供僧寺として建立後、明治の廃仏毀釈の折も存続し現在に至ります。木の鳥居を潜り、清浄な空気に包まれた、緑濃き境内へと歩を進めます。壮麗な神門の先には、総檜造の社殿が優美な姿を見せていました。相模川のほとりに営まれたその神社は、西方に富士山や大山を望み、今日まで篤い信仰を受けてきました。

 境内の広い空間の上には、穏やかな初夏の青空が広がります。壮麗な社殿と回廊、そして外側の瑞々しい緑がさらに大空の奥行きを増幅させてくれているように感じられます。境内に東接して、寒川神社の歴代の神官が祀られているという興全寺があって、寒川神社とは一体的に、神域的な景観を構成しています。明治期の地勢図を確認しますと、相模川左岸の自然堤防上に、現在もある参道の延長に寒川神社を中心とした境内地が形成されていて、その周辺が穏やかな集落と田園地帯となっていることが見て取れます。相模国一之宮を中心としたのびやかな地域は今、ゆるやかに首都圏からの郊外化の影響を受けて、畑地や住宅地の間に工場や流通業の拠点などが立地する風景が広がるエリアへと変化しています。地域の観光協会が設定している、地域の「お大師様」が佇むスポットをめぐりながら、現代の寒川の町並みをめぐりました。

西善院

西善院
(寒川町宮山、2017.5.6撮影)
寒川神社

寒川神社鳥居前の景観
(寒川町宮山、2017.5.6撮影)
寒川神社

寒川神社・神門
(寒川町宮山、2017.5.6撮影)
寒川神社

寒川神社
(寒川町宮山、2017.5.6撮影)

 畑の緑鮮やかな景色や長屋門のある家屋と屋敷林に彩られる家並み、そしてJR寒川駅に近づくにつれて住宅地としての密度が増していく様子を確認し駅前に戻った後は、橋上駅舎となっている駅構内を通過して駅の南側へも足を伸ばしました。閑静な住宅地域を過ぎて南へ、地域を東西にゆるやかに貫通する県道44号へと到達します。この県道は大山参詣道の中でも主要なものとされた「田村通り大山道」の道筋を踏襲しています。県道の沿線は昔ながらの町屋も少なからず見受けられます。

 果たして、一之宮天満宮の小さなお社の傍らに、「梶原景時館跡」の説明板が設置されていることを見つけました。源頼朝の信頼が篤く、鎌倉幕府の土台を築いた武将の一人として知られる梶原景時はこの地に館を築いており、堀跡や土塁跡と伝承される事物も残される、歴史のある地域でした。明治期の地勢図を再び確認しますと、大山道沿いに旧・一之宮村の中心集落が発達していることが見て取れまして、ここが現在の寒川町の地域における伝統的な中心であることが理解されました。旧大山道沿いの小田や名町並みを東へ辿り、八幡大神や景観寺などの史跡を訪ねて、一之宮地域ののびやかな街並みを歩きました。

興全寺

興全寺
(寒川町宮山、2017.5.6撮影)
長屋門の見る風景

長屋門の見える風景
(寒川町大蔵付近、2017.5.6撮影)
梶原景時館跡

梶原景時館跡
(寒川町一之宮八丁目、2017.5.6撮影)
旧大山街道

旧大山街道(県道44号)の景観
(寒川町一之宮八丁目付近、2017.5.6撮影)

 寒川神社を中心に、同神社周辺の風景と現代市街地景観、そして大山参詣道と結びつきながら町場を形成してきた寒川の街並みは、初夏の青空の下奥ゆかしい輝きを見せていまして、地域の歴史を鮮やかに映し出していました。


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