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関東の諸都市・地域を歩く


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#108 今市、杉並木のある風景 〜日光への参詣道の深閑〜

 2016年10月16日、現在は日光市の一部となっている今市を訪れました。東武日光線・下今市駅を出発し、日光街道から日光例幣使道、会津西街道及び日光北街道が分岐する宿場町として交通の要衝であった旧今市宿を承継する穏やかな町並みを進みました。この日は快晴で、駅構内の歩道橋からも男体山や女峰山をはじめとした日光連山をすっきりと望むことができました。

下今市駅

東武日光線・下今市駅
(日光市今市、2016.10.16撮影)
今市の町並み

今市の中心市街地の町並み
(日光市今市、2016.10.16撮影)
報徳二宮神社

報徳二宮神社
(日光市今市、2016.10.16撮影)
報徳二宮神社

報徳二宮神社の鳥居越しに市街地を眺める
(日光市今市、2016.10.16撮影)
如来寺

如来寺
(日光市今市、2016.10.16撮影)
川原町交差点南

川原町交差点南の町並み
(日光市今市、2016.10.16撮影)

 市街地中心部にある道の駅の近傍に、二宮尊徳を祭神とする報徳二宮神社が鎮座します。二宮尊徳は日光神領復興を幕府から委託され、今市に設置された報徳役所にて活動を行っていましたが、この今市の地で逝去しています。この神社はそうした事績を讃えて1898(明治31)年に鎮座祭が挙行されました。慎ましやかな社殿の先にある鳥居越しに眺めますと、家並みの間に続く参道が街道まで直線的に続いていまして、この町における尊徳への深い崇敬の念が伝わってくるような風景でした。鳥居前の裏道を進みますと、如来寺(浄土宗)の門前へと行き着きます。質実な表情を見せる三門を入りますと、雲ひとつ無い青空の下、壮麗な本堂がゆったりと佇んでいました。藩政期には、東照宮御造営の際に徳川家光が宿泊するための壮大な御殿が境内に建てられていたことでも知られています。

 如来寺を後にして、交通の要所として繁栄してきた歴史を示すようなまとまった町並みの中を大谷川(だいやがわ)方面へと歩を進めます。途上には醸造元も存在して、上質な伏流水の存在を示唆していました。大谷川は中禅寺湖を源として鬼怒川に注ぐ河川です。今市の町がある場所はその大谷川が形づくる扇状地の扇頂部に位置しています。扇頂は谷間を進んだ川が平地へと流れ出す場所であることから、多くの交通路が収斂しやすい地勢を備えています。そうした町場のことを谷口集落と呼びますが、今市もそうした市街地の系譜を持つものであると言えるでしょうか。川原町交差点の先、大谷橋上からは、遙か奥日光からの流水を集めて雄大に流れる川の向こうに、伸びやかな日光の山並みを望むことができました。

日光連山眺望

大谷橋より日光連山を眺望
(日光市今市、2016.10.16撮影)
大谷川沿いの田園風景

大谷川沿いの田園風景
(日光市瀬川、2016.10.16撮影)
日光だいや川公園

日光だいや川公園・秋空
(日光市瀬川、2016.10.16撮影)
日光杉並木

日光杉並木
(日光市瀬川、2016.10.16撮影)
国道と杉並木

瀧尾神社西、国道と杉並木
(日光市今市、2016.10.16撮影)
今市屋台祭り

今市屋台祭りの風景
(日光市中央町、2016.10.16撮影)

 大谷川沿いのサイクリングロードを進み、多くの人々が訪れている日光だいや川公園を抜け、東武日光線の鉄路をくぐりますと、日光杉並木の下へと導かれました。日光街道沿いを中心に藩政期に植栽された杉並木は約1万5000本に及び、世界最長とも目されています。30から40メートルにまで生育した杉の大木が街道をまさに緑のトンネルのように覆って、路傍を流下する水路の流れとともに、深閑の世界を形成していました。途上には戊辰戦争の際に砲弾が当たった跡が残る「砲弾打込杉」もあって、400年にも及ぼうとする並木が過ごした時間の長さを感じました。杉並木が今日まで樹勢を維持している背景に、大谷川の伏流水による涵養があるとされていまして、並木は奥日光からとめどなく供給される水によって存立しているとも言えると解説されていました。

 日光杉並木の一部区間を経て、瀧尾神社を参拝し今市の町並みへと戻りました。この日は今市屋台祭りが挙行されていまして、華麗で精緻な彫刻に彩られた屋台が町内ごとに繰り出していまして、秋の晴天の町を盛り上げていました。

 ※このフィールドワークは、この日を含め期間限定で開催されていた東武健康ハイキング「日光開山1250年記念 今市屋台まつりハイキング」に参加することにより実施しました。

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