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北海道の風 II

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「 北海道の風 II 」

風は、うたう
淡々と、口ずさむ
ありのままを、奏でる

今、聞こえたのは、冬の大地の声
大地に刻まれた、豊かな実りを約束された人々の魂の声
たくさんのあたたかさと、慈愛に満ちた、
たおやかで、うるおいに溢れた、冬のア・カペラ

“世界へ、この声よ届け
我々の踏みしめた道を、生き抜いたこのいのちを
世界へ、この揺るぎない意志よ、貫け”


白く厳しい大地は、あまりある恵みのなか
一時(いっとき)、地上の万物を凍てつかせる

そんな厳しい季節を内包しながらも
なんと心にぬくもりを与える声なのだろうか
なんと力強さと、輝かしさに満ちたメロディなのだろうか



かつて、この大地にアイヌの文化が花開くその前から、この大地に並々ならぬ憧憬を抱いて、根づいたものたちがあった。彼ら、彼女らは、これだけ厳しい冬を敢えて受け入れてでも、この大地を目指した。そこには、この大地へ向かう揺るぎない意志と、また大地が備えていた、確かな豊かさ、実りとが交錯していた。春から秋にかけては、実に多様な植物が採集できたし、海や陸にはさまざまな獲物を狙うことができた。そして、秋には黙っていても大量のサケが俎上してくる。私たちが感じている以上に、古来より北海道は豊かな実りと動植物の採集・狩猟が期待できる、「ゆたかな大地」であったのである。この、この上ないアドバンテイジを求めて、北方より流入した民によって、鮮烈な狩猟文化が花開いた。冬の厳しさは、大地の余りある豊かさによって、ある意味においては相殺されるものであったとさえいえるものだったのかもしれない。

小清水町付近の景観

北海道小清水町付近の景観
(2002年2月12日撮影)
釧路湿原冬景色

釧路湿原冬景色
(標茶町;2002年2月12日撮影)

これまで、稚内に始まり、紋別、そしてウトロと、冬のオホーツク海沿岸のいまを、私の観察したまま書き連ねてきたのだが、それは冬の厳しい環境に打ちのめされるこれらの地域がいかに輝きを失わず、活力を生み出し、歩みつづけているかを、逆に発見する行程であったといえるのかもしれない。実際、稚内や紋別などの大きい町はそれぞれに地域の中心都市として、一定の規模と活気を備えていたし、枝幸や浜頓別、常呂や斜里といったローカルな中心集落も、それぞれに与えられた役割を果たす、元気な市街地であるように感じた。少なくとも、私たちが一般に抱いている、冬の厳しい気候の下に沈んだ地域像といったものには、全く出会わなかった。北海道の冬は、想像以上に“ホット”なのかもしれない。

しかしながら、その一方において、北海道の景況が依然厳しく、経済的には相対的な停滞を余儀なくされている現実もまた存在する。また、この大地には強制労働とか、開拓に汗した多くの人々の汗や涙といった、直視しなければならない悲しい物語も滲んでいる。冒頭に紹介した、「試される大地」というフレーズに込められた、北海道の切実な気持ちは、こういった状況にある意味において裏打ちされているようにも感じる。

ただ、私は、北海道の様々な姿、冬の大地の姿、町の姿、いのちの姿を実際に目にし、体で感じることができて、この大地が確かな豊かさに導かれた、希望の大地であることもまた、感じることができたような気がする。北海道の歩んだ歴史が、多くの豊かさを享受した、たくさんのいのちによって開拓されてきた、希望の雪道であったことを、私は確信する。道のその先には、明るさにあふれた、真っ白い足跡や轍が、はつらつと刻まれていくことだろう。北海道の冬の風は冷たいけれど、いのちは、ほんとうに温かい。

− 北海道の風 II 完 −


Regional Explorer Credit
  2002年2月 9日  午後1時羽田空港発の飛行機で新千歳空港に午後2時30分到着。さっぽろ雪祭りを見た後、特急利尻(午後11時発)に乗り込む。         
        2月10日  午前6時、稚内着。午前8時発のロードバスで紋別へ。紋別にて宿泊。
        2月11日  紋別港で流氷観光船乗船後、ロードバスにてウトロへ向かう(網走で乗り換え)。ウトロにて宿泊。
       2月12日  知床斜里駅から快速マウントレイク号で標茶駅へ。標茶駅からSL釧路湿原号で釧路駅へ。午後5時15分釧路空港発の飛行機にて羽田に戻り、自宅へ戻る。


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