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飛騨高山、平成最後の高山祭

 2019年4月14日、岐阜県高山市などを訪れました。改元を来月に控えて、高山では「平成最後の高山祭」が開かれました。
他の地域からはやや遅い春の訪れに華やぐ飛騨の山あいは穏やかさに溢れていました。

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ページ設置:2020年7月17日

飛騨高山、春本番を間近に控えた町並みと高山祭

 2019年、本州の大方の地域では4月上旬に桜が満開を迎えていました。気象庁の統計を見ますと、本州中南部の多くの地域が4月の上旬までに満開を迎えていた一方、内陸の各地は4月15日以降となっています。この日訪れた飛騨高山の桜は咲き始めと行った感じで、やわらかな春色に町を染めつつあるようでした。路肩にまだ残雪のあった安房峠を越えて到達した高山の町並みは、年に2回の高山祭(春の山王祭、もう1つは「秋の八幡祭」)の当日の朝、徐々に人の波が増えつつありました。近代の学校洋風建築を模した市立図書館煥章(かんしょう)館前の空町駐車場に車を止めて、高山の市街地散策へと出かけました。

市立図書館煥章館

市立図書館煥章館
(高山市馬場町二丁目、2019.4.14撮影)
飛騨護国神社

飛騨護国神社
(高山市堀端町、2019.4.14撮影)
古い町並み

高山市街地、古い町並みの風景
(高山市馬場町一丁目、2019.4.14撮影)
市政記念館

市政記念館
(高山市神明町四丁目、2019.4.14撮影)
日枝神社御旅所

日枝神社御旅所
(高山市川原町、2019.4.14撮影)
高山祭の屋台

陣屋前、高山祭の屋台が並ぶ
(高山市本町一丁目、2019.4.14撮影)
高山陣屋

高山陣屋
(高山市八軒町一丁目、2019.4.14撮影)
からくり奉納

からくり奉納
(高山市本町一丁目、2019.4.14撮影)

 高山は「飛騨高山」の名前で広く知られるとおり、岐阜県北部、旧飛騨国の中心都市として存立してきた歴史を持ちます。戦国時代の高山城築城により端を発し、高山藩の時代を経て、幕府直轄の天領として藩政期を過ごしました。現在でも「三町(さんまち)」地区を中心に伝統的な町並みが残されていまして、高山は「飛騨の小京都」と呼ばれています。駐車場を出て南へ向かい突き当たった場所にある飛騨護国神社はかつて高山城のあった城山の北麓に鎮座しています。神社の結構を確認しながら、重要伝統的建築物群保存地区の指定も受ける上一之町方面へと歩を進めます。町並みはやがて格子壁の美しい町屋が連なる風景へと変わり、藤があしらわれた和傘の下に提灯が下がる装飾が春祭りの雰囲気をいっそう盛り上げていました。町並みの南端には1895(明治28)年から1968(昭和43)年まで町役場・市役所として使用された市政記念館の豪奢な和風建築があって、市街地に風格を与えています。

 市政記念館前を右へ曲がり、穏やか町並みを進みますと、市街地を穏やかに流れる宮川のほとりに行き着きます。赤い欄干の中橋を渡りますと、高山陣屋前へと到達します。陣屋前の交差点は広いスペースが確保されていまして、春の高山祭当日のこの日は既に車両通行止めとなって多くの観光客が押し寄せていました。川の畔には日枝神社の御旅所があり、春の高山祭を挙行する町々(安川(やすがわ)通り:国道158号以南の地域)が担当する屋台が徐々に集まり始めていました。春の高山祭は、旧高山城下町の南半分の氏神である日枝神社の例祭です。春ののびやかな空気の下、12の屋台が町中を艶やかに曳き回されます。御旅所前にはうち4台の屋台が曳きそろえられて、いっそう祭りの気分が高まります。屋台はそれぞれが国の重要有形民俗文化財です。三番叟(さんばそう)・石橋台(しゃっきょうたい)・龍神台(りゅうじんたい)については「からくり奉納」が行われまして、人形が生きているかのような動作に心を奪われました。

宮川沿いの景観

宮川沿いの景観
(高山市本町二丁目、2019.4.14撮影)
恵比須台(えびすたい)

恵比須台(えびすたい)
(高山市上三之町、2019.4.14撮影)
高山・古い町並み

高山・古い町並み
(高山市上三之町、2019.4.14撮影)
安川通り

安川通り
(高山市上三之町、2019.4.14撮影)
宮川

宮川(鍛冶橋より)
(高山市片原町、2019.4.14撮影)
飛騨国分寺

飛騨国分寺
(高山市総和町一丁目、2019.4.14撮影)
飛騨国分寺・三重塔

飛騨国分寺・三重塔
(高山市総和町一丁目、2019.4.14撮影)
JR高山駅

JR高山駅
(高山市花里町六丁目、2019.4.14撮影)

 春の雨が降り出した市街地を散策します。その後強まった雨の影響で、この日の祭りの行事は中止となったようでした。からくり奉納鑑賞後はアーケードのある本町通り、筏橋を経て三町の古い町並みへと進みました。宮川沿いのソメイヨシノは咲き始めと行った風情で、芽吹き始めた柳の若芽と好対照をなしていました。平入格子壁の美しい木造の町屋が並ぶ町並みは、藩政期そのままの佇まいを残しています。所々に高山祭の屋台を収蔵する収納庫があり、煌びやかな屋台が人目を引いていました。目抜き通りである安川通りは歩道にアーケードが架けられていまして、その下は芋を洗うような人混みです。三町(さんまち)は、上三之町、上二之町、上一之町を中心とした市街地で、高山における伝統的な中心地を形成してきました。宮川端はそんな穏やかな町屋が寄り添うように並んで、まさに「小京都」らしい風情を醸し出しています。町並みは安川通北側の下二之町や大新町一丁目方面へも続いていまして、櫻山八幡宮の鳥居前へとつながっています。秋の高山祭と呼ばれる「八幡祭」は櫻山八幡宮の例祭で、安川通北側の各町が屋台を巡行します。

 安川通に出てからはJR高山駅前方面へ歩を進めます。鍛冶橋を渡った先は「国分寺通」となり、町の玄関口である駅前へと続いています。沿道には通りの名の由来となった飛騨国分寺が佇みます。室町時代建築の本堂(重要文化財)や江戸時代完成の三重塔が残り、奈良時代以来の由緒を持つこの寺の歴史を今に伝えていました。やわらかに雨に濡れる境内はしなやかな空気に包まれていまして、昔も今もこの地が飛騨における中心地で会ったことを静かに物語っているようでした。2016(平成28)年に完成した新しい高山駅の駅舎はいわゆる和モダンのテイストを生かした瀟洒なデザインとなっていまして、市街地に現代的なアクセントを与えていました。

日下部民藝館

日下部家住宅(日下部民藝館)
(高山市大新町一丁目、2019.4.14撮影)
大新町の町並み

大新町一丁目の町並み
(高山市大新町一丁目、2019.4.14撮影)
櫻山八幡宮の鳥居前

櫻山八幡宮の鳥居前
(高山市大新町二丁目、2019.4.14撮影)
櫻山八幡宮

櫻山八幡宮
(高山市桜町、2019.4.14撮影)
大新町二丁目

大新町二丁目の風景
(高山市大新町二丁目、2019.4.14撮影)
大新町の古い町並み

大新町の古い町並み
(高山市大新町一丁目、2019.4.14撮影)
江名子川沿いの風景

江名子川沿いの風景
(高山市桜町、2019.4.14撮影)
高山別院

高山別院
(高山市鉄砲町、2019.4.14撮影)

 駅からは駅前中央通りの商店街を通って再び町中へと進んで、柳橋を経て古い町並みを歩きました。安川通の北側の下一之町地区一帯も昔ながらの家並みが色濃く残っていまして、やや観光地化の雰囲気が強めの三町地区とはまた違った落ち着いたたたずまいが印象的なエリアのように目に映りました。江名子川の小流を越えた先には、共に重要文化財の日下部家住宅と吉島家住宅の古い町人の住居建物が残されています。その質実かつ重厚な表象は、飛騨匠と呼ばれた優れた技術者集団と、地域における良質な林産資源、そして町人たちの経済力のまさに結晶であると言えます。さらに町並みの中を歩きますと、秋の高山祭の舞台となる櫻山八幡宮は目と鼻の先です。宮川に面して建つ大鳥居から続く参道は凛とした空気に包まれていました。静かな町の容貌に、秋の喧噪が重なります。

 市指定文化財の宮地家住宅を一瞥しながら大新町、下一之町へとつながる町並みを戻り、穏やかな散策路となっている江名子川沿いを歩いて高山別院へ。正式な寺号は光曜山照蓮寺(こうようざんしょうれんじ)で、京都の東本願寺を本山と仰ぐ真宗大谷派の古刹です。塔頭のある参道を経て安川通の歩道にアーケードのある商店街へと出て、車を止めていた駐車場へと戻りました。春の雨に濡れる高山の町はどこをあるいてもしなやかな風景の連続で、連綿と続く地域の中心商業地としての格式と円熟を感じさせました。


濃飛国境の山並みをゆく 〜平成最後の「平成」を訪ねる〜

 高山市街地散策の後は、JR高山駅の西側をバイパス状に貫通する国道41号へと出て、車を南へ走らせました。国道沿いは地方都市に見られる典型的なロードサイド型店舗が集積する景観が続いていまして、観光客メインの中心市街地に対し、地元住民の需要に応える商業地という印象でした。市街地を歩いていた頃から降り始めていた雨はいよいよ本降りとなっていまして、中央分水嶺を越えて飛騨川流域へと進む国道の路面を濡らしていました。地形的には太平洋側となる飛騨川は依然として山間の峡谷然とした山間を進んでいまして、ここより下流の下呂市にかけての地域が飛騨地方に属する理由が理解できました。

濃飛国境の山並み

濃飛国境の山並み
(国道41号沿い、2019.4.14撮影)
馬瀬川第二ダムのダム湖沿いの桜並木

馬瀬川第二ダムのダム湖沿いの桜並木
(下呂市金山町岩瀬、2019.4.14撮影)
馬瀬川第二ダムのダム湖沿いの桜

馬瀬川第二ダムのダム湖沿いの桜
(下呂市金山町岩瀬、2019.4.14撮影)
津保川上流の集落景観

津保川上流の集落景観
(関市上之保、2019.4.14撮影)
道の駅平成

道の駅平成
(関市下之保、2019.4.14撮影)
道の駅平成近くの津保川

道の駅平成近くの津保川
(関市下之保、2019.4.14撮影)

 下呂の温泉街を一瞥し、濃飛横断自動車道を経て馬瀬川第二ダムのダム湖畔を進みます。湖岸道路沿い桜並木はまさに満開となっていまして、大地を濡らす雨に濡れていっそう春のしめやかさに包まれてそのみずみずしさを際立たせていました。馬瀬川流域の県道86号から県道85号へと入り、自動車がすれ違うのも難しい細い山道の峠を越えて、津保川の谷間へと下りました。山中の集落のソメイヨシノもあちこちで豊かな桜色を木いっぱいに咲かせていまして、霧のかかる山肌に映えていました。関市上之保から武儀へと車を走らせて、「道の駅平成」へと到達しました。平成への改元の時、当時は武儀町にあった字名「平成(「へなり」と読む)」が一躍脚光を浴びました。穏やかな山里であるこの場所も、ソメイヨシノの花に彩られて、静かに新たな時代を迎えようとしていました。



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