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都道府県花暦

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6.もみじの花(広島県)

都道府県の花は、たとえば春の麗しい季節に咲き乱れる花、あるいは地域の自然や名産品にちなんだ花などが並びます。そういった地域性あふれる豊かなラインナップが並ぶ中で、ひときわ異彩を放っている花の1つが、広島県の「もみじの花」ではないでしょうか。多くの皆さんにとって、「もみじの花はどんな花ですか?」と問われても、イメージすら湧かないのではないかと思います。紅葉の時期に、プロペラのように空を舞うのは、もみじの実であって、花ではありませんよね。かく言う私も、もみじの花がどのようなものか、この稿を書くために調べてみますまで、まったく知らなかったのです。

そもそも、「もみじ」ということばそのものが、きわめて抽象的なんですね。もみじとは、調べてみますと、秋に野山が木々の紅葉・黄葉その他の変色によって、きれいに色づくさまを指すことばでして、ある特定の植物種を指すことばではないわけです。カエデでも、ウルシでも、ブナでも、色づけばすべて「もみじ」なのでしょうか。このことからも、日本人にとって、秋の野山の木々が見事に色づくイベントは、昔から、きわめて大切な季節のシーンだったのでしょうか。

また、もみじは色だけでなく、さまざまな日本人の心をくすぐる要素を持っています。まず、北から南へ、高原から平野へ、絶妙な時間差を持たせながら、持続していきます。北海道では既に9月あたりから高山で色づき始めますし、南岸の低地では12月の声を聞いて、紅葉の息吹が里を包むようになります。また、実りの秋、紅葉には豊穣の大地がとても似合います。東日本や北日本では、黄金の穂並の向こうに萌える山々を眺めることができますし、稲刈りが終わった後の、稲が干された風景のバックとしても、紅葉は最高の素材です。さらには、土地土地の魅力的な文化や自然環境などのエッセンスと微妙に絡み合いながら、トータルとして「日本の秋」を演出する。紅葉にしかできないことだと思います。


イロハカエデの花

もみじの花(イロハカエデ) YSK画

 話をもみじの花に戻します。もみじの代表格とも言える、カエデの仲間のうち、イロハカエデ(イロハモミジとも呼ぶようですね)の花を描いてみました。周囲の葉は飾りです。今回の主役は、真中の「花」ですよ。実は、カエデの仲間でも、花の形は千差万別です。イロハカエデの場合は、絵のように、右側の桃色の雄花と、既にプロペラ型の子房のついた雌花とが、同じ木につきます。イロハカエデが花をつけるのは、初夏。新緑の季節とのことです。鮮やかな命漲る若葉の輝きの初夏の森を巡りながら、もみじの花のことを、ふと思い出してみてくださいね。

五月雨をいつか見た空もみぢ花

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